銀桜録 新選組奇譚篇 | ナノ


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名前「土方さん土方さんっ!!」

土方「っ!?おい、何しやがるんだ」

名前「山南さん、食べてくれました!!」


廊下を歩いていた土方に体当たりをすれば般若のような顔で見下ろされた。
しかし土方は、名前の言葉にハッと目を見開く。


土方「本当か?」

名前「はいっ!完食してくれました!」

土方「……そうか」


相当心配していたのだろう。
土方は安堵したように一瞬表情を和らげた。


土方「よくやった」


そう言うと、珍しく土方は名前の頭をぽんぽんと撫でた。
しかし名前には、彼のその瞳には若干の寂しさが浮かんでいるように見えた。


名前「そうだ、山南さんから土方さんに伝言です」

土方「あ?伝言?」

名前「『沢山声をかけて下さってありがとうございます、応えられなくて申し訳ありません。今度改めて謝らせてください』だそうです」


土方の切れ長の目が、驚いたように見開かれた。


名前「ちゃんと山南さんに届いてましたよ、土方さんの言葉も」

土方「……生意気言うようになりやがって」

名前「いてっ」


コツッと頭を軽く小突かれる。
何だか前にも同じようなやり取りをした気がする。
そんな事を思っているうちに、土方は漆黒の髪を揺らしてその場を去って行った。
その足取りが今朝よりもほんの少しだけ軽くなっているように見えて、名前の顔は綻んだのであった。

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