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その後も色々な話をしているうちにあっという間に時間が過ぎていき、帰らねばならない時間となった。
また遊びに来ると約束をした名前は、ご機嫌な足取りで斎藤と共に店を出る。
斎藤「……反物に興味があったのか」
そう言った斎藤は少し意外そうであった。
名前「うん、好きだよ。詳しいわけじゃないけど……。試衛館に居た頃に商売で呉服屋に行くことがあったんだけど、綺麗な反物ばっかりで凄く憧れてたんだ」
斎藤「……そうか」
名前「うん。反物だけじゃなくて、綺麗な物は何でも好きだよ」
そう語る名前は羨望の眼差しであった。
彼女がここまで物欲を露わにするのは珍しい、と斎藤は思う。
しかし名前も女子だ。
京ですれ違う女子達のように綺麗な着物を着て化粧をして着飾ってみたい、という思いが無いわけではないのだろう。
名前は心が綺麗だ。
元々の容姿も整っているが、心の美しさが彼女の容姿をさらに美しく見せていると斎藤は思う。
そんな彼女が他の女子のように着飾ったら……どれ程綺麗だろうか、とも。
名前「頑張ってお金貯めて、いつかあの着物を兄様に見せてあげたいな」
彼女の原動力となるのは、いつだって家族や仲間の存在なのである。
斎藤「…叶うといいな」
名前「うん!お仕事頑張らなくっちゃ!」
斎藤「…ああ」
るんるんと浮かれた足取りで歩いている名前を、斎藤は小さな笑みを浮かべて見守っていたのである。
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