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災いとは、一度降りかかると立て続けに起こるものらしい。
数日前に綱道が行方不明になったばかりだが、事態はそれだけでは済まなかったのである。
土方「 ─── いずれ何かやらかすんじゃないかとは思っていたが、よりによって変若水を持ち出しやがるとはな……」
声を潜めて話す土方の眉間には、いつも以上に皺が寄っている。
その場には変若水の事情を知る幹部達が集められており、同じように険しい表情を浮かべていた。
なんと、新見が脱走してしまったというのである。
それも厄介な事に、変若水を持って。
藤堂「どうするんだよ土方さん。急いで行方を探さなきゃならねえんだろ?」
土方「……事の重大さを考えれば隊士総出で新見さんを探したいところだが……変若水絡みとなりゃ、事情を知っている俺達だけで探し出すしかねえだろ」
変若水絡みであれば、他の隊士達にこの事態を知られるわけにはいかない。
何とかして全てを内密に終わらせなければならない。
ただでさえ綱道の失踪で情報漏洩が懸念されているというのに、厳しい状況である。
山南「そうですね……。幸い、実験し羅刹化してしまった隊士達は連れ出されてはいませんでした」
原田「……ってことは、すぐに騒ぎになることはねえってことか」
名前「……でも、新見さんは今まで何度も無断で実験をしているんですよ。変若水を持ち出したのなら、その辺の浪士に飲ませて実験をするかもしれませんし。いつ騒ぎになってもおかしくはないです」
沖田「うん。それにあの人、変若水を売り込む為なら手段を選ばないんじゃないですか?」
名前と沖田の指摘に、近藤は険しい顔で頷いた。
近藤「うむ……。兎に角、新見さんを探す事が最優先だ。巡察中もしっかり気を配ってくれ」
こうして名前達は、綱道だけではなく新見の行方も探さねばならなくなり、猫の手も借りたい状況になるのであった…。
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