双界の縁と交流 | ナノ


5

小雪は嬉しそうに跳び跳ねていたが、はて?と何か思うことがあるらしい。

跳び跳ねるのを止めて、首をかしげながらティールとアイリアに質問をする。


小雪「そういえば、アイリアちゃんとティールちゃんの適正属性って、どれなの??」

アイリア「え?ああ、私はね……」


そう言って赤い召喚石…サモナイト石を 取り出す。
そして、そこに精霊力を込めると……


「ひゃ…っ!」


妖狐の少女が出てきたのだ。
出てきた少女はというと、小雪たちを見てちょっぴり驚いたらしい。
アイリアの後ろに隠れてしまったが(笑)


小雪「わ、可愛い…っ!狐?」

アイリア「うん、ハサハっていうの。私の護衛獣でね、この子は」


属性を言おうとしたら、可愛い子に目がない白澤(来)が会話に加わる。
どうやら、ハサハにもちゃんと挨拶(という名の口説き)をしたいようだ(笑)


白澤(来)「赤い石だったし……この子の属性は『鬼』でしょ?」


本当に可愛いねぇ♪よろしくねぇ〜♪と話しかけるが…ハサハはというと、一瞬だけ白澤(来)を見はしたが…アイリアに再度隠れてしまった。


白澤(来)「あ……」


隠れたハサハに、白澤(来)は残念そうな声を上げる。


白澤(海)「ハサハちゃんは、ティールほどではないけど…人見知りする子だからねぇ」


ゆっくり慣れていくといいよ。と白澤(海)は優しくハサハの頭を撫でる。

頭を撫でられるハサハはというと、嬉しそうに微笑んでこくん、と頷いていた。


白澤(来)「ちょっと、なんでやっぱりそっちの僕には普通に慣れてるのに、僕には若干拒絶っぽいんだよー」


納得いかないんだけど、と抗議をする白澤(来)だが、鬼灯(来)に


鬼灯(来)「ちょっかい出すな、この変態神獣」


とまたもや金棒で脅されていた(笑)


小雪「アイリアちゃんは『鬼』属性と相性がいいんだね♪しかも、可愛い子が護衛獣…♪」


私も、可愛い子喚べるといいなぁ♪とますます護衛獣召喚が楽しみになってきているらしい。


小雪「で…んーっと…ティールちゃんの護衛獣は…鬼灯さん……鬼灯さんは『鬼神』だから……」


えーっともしかして属性は……と続けようとする小雪に、鬼灯(来)は引き継ぐように言葉を紡いだ。


鬼灯(来)「『鬼神』は種族的には『鬼』ですし。ティールさんの適正属性も『鬼』ですね?」

鬼灯(海)「と、思うでしょう?」

小雪「えっ?」


鬼灯(海)の反応に、小雪と鬼灯(来)は、ポカンとしてしまう。


鬼灯(海)「違うんですよ」

鬼灯(来)「えっ?」

鬼灯(海)「私、その4属性のどれでもないんです」


と、ティールの頭を撫でながらそう続けたのだ。


白澤(来)「えっ!?どういうこと!?」


だって、属性は4つだって…!と白澤(来)も驚きが隠せない。


ティール「あ、えっと…確かに…護衛獣が喚べる属性はこの4つで…4属性から自分の適正を見極めるのですが…」

鬼灯(来)「ですから、鬼灯さんは『鬼神』ですし…普通に考えたら『鬼』なのでは?」

鬼灯(海)「言ったでしょう?ティールさんの場合は『事故』で私を喚んでしまったのだ、と」

小雪「あ、そっか…予期せぬ事が起きてしまったせいで…、あれ?でも、やっぱり属性は4つしかないだし……『事故』でも、この4つのうちのどれか、になるんじゃ…?」


『事故』でも、喚べる属性は変わらないんじゃ?と首をかしげる小雪に、鬼灯(海)から、驚きの言葉が出た。


鬼灯(海)「いいえ、あるんですよ。あと1つ…本来なら護衛獣を『喚べない』属性がね」

小雪「えっ?」


護衛獣が喚べない属性?と小雪はますます首をかしげる。


鬼灯(海)「『無』」

鬼灯(来)「はい?」

鬼灯(海)「私は『無』属性の護衛獣になります」


その言葉を聞いて、驚きのあまりに言葉を失っている小雪にアイリアの説明が入る。


アイリア「『無』属性は誰にでも使える、というのが特徴。だけど、護衛獣を喚ぶための属性じゃないから、普通なら喚べない」

ティール「それで、えっと、その…」

小雪「?」

ティール「『無』属性の世界…【名も無き世界(ニッポン)】から喚ばれた召喚獣は…5つ全部の属性の召喚術が使えるようになる、というのが…最大の特徴なんです」

鬼灯(来)「え?じゃあ、鬼灯さんは…召喚術を…」

鬼灯(海)「使えます」


とはいえ…私は術師じゃないですし…威力は高くないんですが、と肩を竦めていたが。


小雪「すごい…!本来なら喚べない属性から召喚獣を喚ぶだなんて…!」


小雪は、ティールの召喚術に感激しているのか、彼女の手を握って「本当にすごいね!」と笑顔を向けている。


鬼灯(海)「まあ…属性の話も出て、いい機会ですし…話しておきますか。彼女、ティールさんの『本来の』護衛獣は『霊』属性ですよ」

鬼灯(来)「『本来の』?」


それって、どういう…?と鬼灯(来)は
怪訝そうな顔だ。


ティール「私は、元々『霊』属性の護衛獣を喚ぼうとしてて…。それで…成功してバルレルっていう子を喚んだ、のは良かったんですが……」

鬼灯(海)「そこで、魔力の軽い暴走状態になってしまい…『陣召喚』の作用が働いてしまいまして…」

小雪「あっ!それで…『魔力暴走の事故』で、本来喚ぶべき護衛獣と重複して、鬼灯さんが『無』属性の世界から喚ばれてしまった、ってこと?」


そう言うことです、と小雪の言葉に頷く鬼灯(海)だった。


小雪「そっか……じゃあ…私が喚ぶときも…気を付けないと…暴発とかあり得る、ってことだよね?」

アイリア「うーん、でも大丈夫だよ。私も『暴発』怖かったけど、何もなく平和に召喚できたし」


だから、ほらほら!小雪ちゃんもレッツ・トライ!とアイリアは明るく召喚を促している。


小雪「うん、そうだね!まずはやってみないと、だもんね!」

アイリア「そうだよ!ファイトー!!」


なんだか2人で盛り上がっている。


小雪「で、ティールちゃん。護衛獣喚ぶときって…何か詠唱とか呪文とかあるの?」

ティール「えっと、一応…派閥の召喚師は…その…正規の詠唱を習ってるけど……でも…あの…小雪さんは、派閥の召喚師じゃないですし、普通になんでも大丈夫、です…」

小雪「うん、わかった…!じゃあ……」


小雪は緑色のサモナイト石を握りしめ
魔力を注ぐ。

そして…


小雪「私の喚び声に応えて、可愛い護衛獣さん、出でよ!」


思い付き+自分の願望を詠唱に乗せて護衛獣召喚を決行。

すると、一際目映い光が辺りを支配し…
思わずその場にいた全員が目を瞑る。

そして、光が止んで…目を開けてみると…?


「???ワン??」


なんとも可愛い、マフラーを巻いたコーギーがそこにはいたのだった。


ーーー


「「「……犬!!?」」」


その場にいた者のほとんどが驚きで声を上げた。

現れたのは、どう見てもコーギー。
マフラーを巻いているのと、ウエストポーチのような物を付けていることを除けば普通の可愛らしいコーギーだ。

獣属性の護衛獣なのだからもっと変わった動物が出てくると思いきや……まさかの可愛い犬である。


小雪「えっ…と、もしかして君が私の護衛獣……?」

「わんっ!そうだよ!」

「「「喋った!!?」」」


まさか言葉を話せるとは思わず、再び声を上げる小雪達。


小雪「すごい、言葉を話せる犬なんて!」

鬼灯(来)「……待ってください、シロさん達も話せますよ」

小雪「……そういえばそうですね」


ペット感覚で見ていたからか言葉を話せることに驚いたものの、よく考えたら地獄の動物はほとんどが言葉を話せる。

言われてみれば、それほど驚くことでもなかったようだ。


小雪「えーっ!!こんな可愛いわんちゃんが私の護衛獣なの!?わあ、すっごく嬉しい!!」


詠唱に乗せた願望が思わぬ方向で叶い、小雪は大喜びで早速コーギーの頭を撫でている。

すると、ティールが恐る恐る口を開いた。


ティール「あ、えっと……この子の名前……コギウス君、です……」

小雪「コギウス君!」

鬼灯(来)「めちゃくちゃコーギーしてる名前ですね」


わあっ、と目をキラキラと輝かせて小雪は喜んだ。

もともと小雪は山を治めていた神であり、山の動物達の長のような存在でもあった。
だから動物とコミュニケーションを取ることは大得意で、動物が大好きなのである。


小雪「コギウス君、初めまして!私は小雪っていうの!来てくれてありがとう、これからよろしくね!」

コギウス君「うん!ご主人!」

小雪「……ん?ご、ご主人!?」

コギウス君「ご主人〜っ!!」


尻尾をパタパタと振るコギウス君。

しかし呼ばれたことの無い呼び方だったためか、小雪は困惑の表情を見せた。


アイリア「あっ、多分……護衛獣とは主従関係にあるから、ご主人呼びなのかな……?」

小雪「えっ、主従関係!?」


小雪は堅苦しい上下関係が苦手である。
自分が下ならまだしも、自分が上に立つような上下関係が苦手だった。

どうしよう、と小雪が見下ろす先には嬉しそうに尻尾を振っているコギウス君。


小雪「……よしっ、わかった!コギウス君、私のことは『こゆき』って呼んでくれる?」

コギウス君「…?…こゆき?」

小雪「そうそう!こゆき!」


不思議そうに首を傾げるコギウス君。
しかし小雪が褒めれば、コギウス君はパッと目を輝かせた。


コギウス君「うんっ!こゆき!わんわんっ!!」

小雪「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」


小雪に向かって飛び込んできたコギウス君。

難なく受け止めた小雪だが、コギウス君のあまりの可愛さに吐血した(!)


鬼灯(来)「大変です、コギウス君のあまりの可愛さに小雪さんがやられました」

小雪「か わ い い ( ゚ ゚)ゴフッ」

白澤(来)「そんなおどろおどろしい声で言うセリフじゃないよ!!」

小雪『か わ い い 』(カキカキ)

白澤(来)「ダイイングメッセージ残すな!!」


小雪にとってコギウス君は、まさに致死量レベルの可愛さが詰まった護衛獣なのであった…。


ーーー

コギウス君に抱きつかれて、可愛さのあまりに昏倒する小雪。

が、何か気になることがあるようで…むくりと起き上がって首をかしげながらティールに質問をする。

もちろん、コギウス君を抱き締めて頭を撫で撫でと撫でながら。


小雪「さっき、アイリアちゃんが…召喚主と護衛獣は『主従』になるって言ってたよね?」

アイリア「えっ?あ、うん。召喚主が『主』で護衛獣が『従』なんだよ〜♪だから私もこの子(ハサハ)に呼ばれるときは…」


そう言って、ハサハを見ると…


ハサハ「?おねえちゃん?」


どうしたの?とハサハは不思議そうに首を傾げながら、アイリアを見て問いかけていた。



アイリア「ね?」


名前で呼ばれる訳じゃないんだー♪とアイリアはハサハの頭を良い子良い子、と撫でてやっている。


鬼灯(来)「?ということは…鬼灯さんも…自然とティールさんとは主従になるってことですか?」

鬼灯(海)「まあ、そうですね。とはいえ、私たち本当に特殊な関係でして…」

小雪「特殊?」


特殊って?と小雪はますます不思議そうに首を傾げている。


鬼灯(海)「…まあ、仕事上…の事にはなりますが…。というか、そちらの私と小雪さんもそうでしょう?」

小雪「え?主従?違いますよ…!」

鬼灯(海)「そっちじゃないです」


ブンブンと首を横に振り否定する小雪だが、鬼灯(海)が言いたいのはそんな事ではないらしい(笑)
すぐさま否定の言葉が飛んできた。


鬼灯(海)「仕事上は、私が上司で彼女が部下です」

小雪「あ、そっちか(笑)」

鬼灯(来)「でも、まあ…それは確かにそうですね。第二補佐官とはいえ…小雪さんは…私の部下には違いないですし」

鬼灯(海)「でしょう?でも、貴殿方の関係は、そこで終わり」


そうですよね?と鬼灯(海)は確認の意味で小雪と鬼灯(来)に問いかける。

小雪「まあ、確かに…そうかも…」


お師匠様との関係みたいに、師と弟子…という関係があるわけではないですし…と小雪は納得している。

そんな小雪を見ながら、白澤(海)が鬼灯(海)の言葉を引き継ぐように言葉を紡ぐ。


白澤(海)「基本的に、ティールとコイツはコイツが上司でティールが部下の関係。でも、ここからがコイツらの面白いところでさ」


そこで言葉を切った白澤(海)の言葉に続けるように今度は鬼灯(海)が言葉を紡いだ。


鬼灯(海)「根本的な関係は、彼女が『主』で私が『従』なんです」


ね?私たちの関係って仕事柄は上下。かと思いきや、根本的なところで立場が逆転するんですよ、面白いでしょう?と鬼灯(海)はそう語ったのだった。


ティール「でも…私は…鬼灯を従って思ったことない…です……」


立場とか関係ないもん…一緒だもん、とちょっぴりむくれてしまっているティールに


鬼灯(海)「(可愛い…)それは分かってますよ。ああ、もう、本当に可愛いな」


ぷぅ、とむくれて鬼灯(海)にくっついてしまったティールの頭を撫でてやる。

鬼灯(海)はそんな彼女の行動に、内心癒されているが、それを表情には出さないように気を付けているようだ。



鬼灯(来)「??あの、貴殿方って…恋人かなにかですか…?」


さっきから、鬼灯さんの行動が恋人にするアレっぽいんですが、と鬼灯(来)は首を傾げている。


アイリア「恋人?え?違うよー♪」


それに答えるのはアイリア。
なんだか、ものすごくニヤニヤしていて楽しそうだ。


小雪「えっ?違うの?」

アイリア「うん、あの2人ねー」


アイリアはさらに面白そうに笑っている。そして


アイリア「夫婦だよ〜♪」


本当に、仲睦まじいよねぇ♪と良いながら、相変わらずニコニコなアイリアだった。


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