双界の縁と交流 | ナノ


4

白澤(来)「…いやお前かよ!!」


驚愕のあまり思考回路が一瞬停止したらしく、やや遅れて白澤(来)のツッコミが入った。

白澤(来)の他にも驚いている者は何人かいる。
小雪は目を丸くしてしており、鬼灯(来)は意外そうにもう一人の鬼灯(海)を見ていた。


小雪「えーっ!鬼灯さんがティールちゃんの召喚獣!?」

鬼灯(海)「ええ。元々は誤召喚だったのですが、色々あってそうなりましたね」

小雪「そうだったんですね!…すみません、正直言うとめっちゃ女神みたいな召喚獣を想像してました」


小雪の頭の中に浮かんでいたのは、ひらひらとした衣を身にまとった天女のような女性。
ティールの雰囲気から連想したようだ。

小雪の言葉に「うんうん」と相槌を打っているのは白澤(来)である。


白澤(来)「わかる。っていうか、コイツでいいなら僕もいける気がする」

小雪「確かに元の神獣の姿ならお師匠様も召喚獣っぽい…と思ったけど、性格に難あり、と」

白澤(来)「今日の小雪ちゃんが冷たすぎてそろそろ泣きたい」

鬼灯(来)「もっと言ってやりなさい、小雪さん」

鬼灯(海)「素晴らしいですね」

白澤(来)「味方がいないんだけど!!」

鬼灯(来)「日頃の行いを見直してから嘆け」


鬼灯が二人いるせいか、小雪の発言がいつも以上にキレッキレなのである。
白澤(来)からして見れば、鬼灯と小雪のダブルパンチ…否、トリプルパンチでダメージが3倍だ。


白澤(来)「可愛い子が3人もいるのに…何ここ、地獄?」

鬼灯(来)・(海)「「地獄ですけど」」

白澤(来)「いやそうだけども!そういう意味じゃねえよ!」


白澤(来)のツッコミが炸裂している。
この人数に対して完全にツッコミが人数不足である。
ここはもう一人の白澤(海)の方にもツッコミを手伝ってもらいたいところだが…。

その白澤(海)は何やらじっと小雪を見つめていた。


白澤(海)「…ねえ、小雪ちゃん」

小雪「なんですか?」

白澤(海)「ちょっと元の格好に戻ってくれる?」

小雪「?わかりました」


再びボフンッと白い煙が巻き起こり、人の姿の小雪が現れる。
それを見た白澤(海)は「うん」と大きく頷いた。


白澤(海)「やっぱり君、すごく可愛いね!今度一緒にご飯でもどう?どこかいいレストランにでも行かない?」

小雪「………は?」

白澤(来)「いやお前もそっちかよ!お前はツッコミ側でいろよ!!」

鬼灯(海)「所詮住む世界が違うだけで性格は同じですからね」

鬼灯(来)「……チッ」

小雪「顔が怖いです鬼灯様」


妹思いの白澤(海)かと思いきや、やはり根本的な性格である女好きは変わらないらしい。
小雪がきょとんとする一方で、鬼灯(来)は物凄い形相で舌打ちをしている。


鬼灯(来)「いいですか、小雪さん。"白澤" という名のつくものには半径1km以内に近づいてはいけませんよ」

鬼灯(海)「それからどんな誘いにも乗ってはいけません。知らない人について行くなと教わるでしょう、"白澤" は知らない人だと思いなさい」

白澤(来)「何を教育してんだよお前らは!」

小雪「…そ、それはちょっと…さすがに無理があるかなぁ…あはは…」


ダブル鬼灯からあれこれと忠告を受け、小雪は苦笑い気味である。
しかしそんな時、ふとティールの隣にいるアイリアに目が行った。
なぜなら、先程まで明るい笑顔を浮かべていたはず彼女が、見るからに沈んでいるからである。


小雪「(…これはもしや…)」


そんなアイリアを見て、小雪はすぐにピンときたようだ。
アイリアは恐らく、白澤(海)に好意を抱いているのだろうということに…。
自分の想い人が他の女を口説いていては誰でも傷付くだろう。

自分の色恋沙汰には全く縁がなくてとことん鈍い小雪だが、周りを見る目には長けているのである。
伊達に閻魔大王の第二補佐官を務めていない。


小雪「…そ、そういえばさ!ティールちゃん、アイリアちゃん!」


頭をフル回転させること僅か2秒。
話題を変えるべく、小雪は声を張り上げた。


小雪「その、さっきの召喚獣ってやつ?私すっごく興味あるなぁ!」

ティール「…あ…本当、ですか…?」

小雪「うん!実は私もさ、これでも神獣だからそれなりに術は使えるんだよね」

アイリア「えっ、そうなの!?」

小雪「うん!鬼灯様の許可が出ない限りは使わないんだけどね。だけど召喚術は全然やったことないから、もし機会があったら教えてほしいなぁ!」


どうやら上手く話を逸らすことができたらしく、小雪の言葉にアイリアとティールは目を輝かせる。
そして話は再び召喚獣の話へと軌道が修正されたのであった。


ーーー

小雪が召喚術を使ってみたい、という言葉を聞き、ティールがちょっとだけ嬉しそうな顔をする。

白澤(海)にくっついたままのティールが、ほわほわしながら言葉を紡ぐ。


ティール「小雪さん、も…召喚術…使ってみたい…ですか…?」

小雪「うん♪ティールちゃんやアイリアちゃんさえ良かったら、教えてほしいな♪」

ティール「♪(こくん)」


小雪の言葉を聞き、ティールは嬉しそうに微笑みながら頷いたが、アイリアがちょっとだけ困ったような表情になる。


アイリア「ええっと……」

鬼灯(来)「アイリアさん?」


どうしました?と問いかける鬼灯(来)に、アイリアは苦笑しながら


アイリア「あ、いえ…。私も、ティールちゃんから召喚術を習ったから…私自身…召喚術は全然分からないんです…」


だから、召喚術を習うのは私よりもティールちゃんの方がいいと思います、と答えた。

その言葉を聞いて、小雪達の視線が白澤(海)にくっついたままのティールに、一気に向けられる。


ティール「あ…ぇ…あの……」


視線を向けられたティールはというと…
大分小雪たち…もとい、ここにいる人たちに慣れたと言ってもやっぱりまだまだちょっとだけ怖いらしい。

白澤(海)に隠れてしまった。


白澤(海)「あららら…(笑)」


自分の後ろに隠れたティールを見て苦笑しながら、彼女に大丈夫だと言い聞かせる。


白澤(海)「ティール、大丈夫だよ。ほら怖くない怖くない」


さっきまでの口説いていた雰囲気は何処に行った?と言いたくなるような優しい表情で、本来の妹想いを存分に発揮している白澤(海)。

どうしても怖かったら、アイツの側にくっついて話すと良いよ。とアドバイスもしている。

犬猿の仲といっても、鬼灯(海)の事は絶対的に信頼しているらしく、ティールを宥めながら鬼灯(海)の方に行くように促す。


ティール「うぅ…でも…に…兄様ぁ…」

白澤(海)「大分慣れてきたとはいえ、知らない人ばっかりでビックリしちゃったんだよね?大丈夫だよ、ね?」


ティール「(こくん)」


白澤(海)に宥められながら、なんとか鬼灯(海)の側に行くティール。
側に行ったかと思ったら、すぐに彼にくっついてしまった。


……なんだろう…めっちゃ可愛い(笑)by小雪


アイリア「ティールちゃん、ほらほら小雪ちゃんに召喚術の基本をしないと。適応する属性を見つけるんだよね??」


最愛の旦那に、ぎゅぅっとくっついて離れようとしないティールにほんわかしながら、アイリアは彼女に先を促す。


ティール「ぇ…あ…はい……あの…。最初に…えっと…小雪さんの得意な属性を見つける必要が…」


ありまして……と、ティールは鬼灯(海)から離れて、黒・赤・緑・紫の綺麗な石を机に並べた。

と思ったら……


白澤(来)「ティールちゃん、こっちおいでよ〜♪」

ティール「きゃ…!?」

白澤(来)「闇鬼神より、兄候補の僕の方が安心できるでしょ〜♪」


鬼灯(海)にくっついているティール
が机に石を奥タイミングを見計らったのか、彼女を自分の膝の上に乗せる白澤(来)


ティール「ぇ……あ……白兄様……あの…」

白澤(来)「白(ハク)兄様って、僕のこと?かわいい〜♪」

ティール「ほ、鬼灯……!」

白澤(来)「ちょっとー、なんで闇鬼神を呼ぶんだよー…僕お兄ちゃんなのに……」


ティールと鬼灯(海)が夫婦とは知らない白澤(来)は、当然ながら、鬼灯に手を伸ばす彼女を抱き締めて阻止していたとかなんとか(笑)


ーーー

ズドォォォンッ

今日何度目かになる轟音が響いた。


鬼灯(来)「セクハラやめろ」

鬼灯(海)「今すぐ離れろ」


鬼灯の金棒×2が目にも止まらぬ速さで白澤(来)を直撃したのである。
しかし、何とか2本の金棒を寄せて這い上がってくるのはやはり神獣だからか。


白澤(来)「だから、ダブルで来んなって!ツッコミが全力すぎるんだよお前ら!」

鬼灯(来)「何事も全力投球が今年の目標なので」

白澤(来)「投球って金棒か!?つうか、ツッコミにまで反映するなよ!」

鬼灯(海)「鬼灯さん、この人をお願いします」

鬼灯(来)「わかりました」


鬼灯(海)はティールのすぐ傍に控え、鬼灯(来)は少し離れた所で白澤(来)を金棒で脅す。
見事な連携プレーである。


鬼灯(海)「もう大丈夫ですよ、ティールさん。続けてください」

ティール「う、うん…」


ティールは白澤(来)の方を少し気にしている様子だが、鬼灯(海)に促されて気を取り直す。


ティール「…えっと…じゃあ、この石を順番に…触ってみてほしい、です…」

小雪「わあ、綺麗な石!触るだけでいいの?」

ティール「は、はい…」

小雪「じゃあ、失礼します!」


ティールに指示された通り、小雪は順に石に触れていく。
すると…


小雪「…わっ、緑の石が…!」


4つのうちの1つ、緑の石が反応を見せたのである。


小雪「適正属性を見つけるってさっき言ってたよね。これって…」

ティール「は、はい…。あ…えっと…」

アイリア「えーっと、確か属性は…黒が機、赤が鬼、紫が霊、緑が獣…だったよね」

ティール「(こくん)」


ティールが口ごもったことに気づいたアイリアが、すかさずフォローに入った。
小雪は2人の説明に、うんうんと頷いている。


小雪「へぇー、そうなんだ!じゃあ私は緑だったから…獣属性ってこと?」

ティール「(こくん)」

小雪「そうなんだ!私自身が狼だからかな?すごい偶然!」


小雪はわくわくしている様子である。


小雪「ちなみに、属性によってどんな違いがあるの?」

ティール「…あ、えと…機は攻撃重視で、鬼は妨害重視…」

アイリア「霊が回復重視で、獣が3つのバランスに優れてる…だったよね」


再びティールのフォローに入るアイリア。
こちらも見事な連携プレーだ。


小雪「えっ、じゃあバランスタイプってこと!?めっちゃいいじゃん、面白いね!」


小雪はというと、興奮した様子でぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜んでいた。


ーーー

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