双界の縁と交流 | ナノ


2

別次元の者達がもうすぐ来るらしいので、お迎えに行ってあげてください。


白澤(来)「って桃タロー君に言われて、待ち合わせの場所に来たけど…」


やって来たのは、地獄の花街にあるとある飲み屋さん。


小雪「どんな子達なんでしょうか…」

鬼灯(来)「別次元の私たちも居るみたいですし、楽しみですよね」

小雪「確かに…♪でも、別次元といっても、鬼灯様と白澤様には変わりはないですし、…うーん…同じ…なような気がします…♪」

鬼灯(来)「……極上ナンパ師が増えるのか…。小雪さん、十分に気を付けてくださいね」

白澤(来)「危険人物みたいに言うんじゃねぇよ」

鬼灯(来)「危険人物だろうが」


小雪さんにいつもセクハラしやがって、という言葉は飲み込む。

それから、色々と話していたら……?


ガララララ…


飲み屋の、自分達のいる個室の扉が開き……


ティール「…!にぃさまっ♪にぃさま〜〜♪」


姿を現した別次元の世界の子、だと思われる人物が、白澤を見るなり「わーい♪」と嬉しそうに人懐っこく微笑んで、飛び付いたのだった。


ーーー

鬼灯(来)・小雪「「!!?」」


鬼灯は切れ長の目を見開き、小雪はあんぐりと口を開けて、目の前で繰り広げられている光景を見ていた。

突如現れた金髪ポニーテールの美少女が白澤に抱き着いているのだから、驚くのも無理はないだろう。


ティール「ふふっ… ♪」

白澤(来)「…………(グッ)」

鬼灯(来)「無言でガッツポーズするな淫獣」

白澤(来)「淫獣じゃねえよ!つうか、この子の方から来たんだからこれは合法だろ!」

小雪「とりあえずお師匠様、その子に触らないでください。触れば即座に貴方を凍らします」

白澤(来)「いつからそんなに凶暴になったの小雪ちゃん!?」


背負っている大太刀に素早く手を掛けた小雪を見て、白澤は「分かった分かった!」と慌てたように両手を上げる。

だが、「凍らせる」という言葉に反応したのは白澤だけではなかった。


ティール「…こ、凍らせる…?い、嫌っ…にぃさまに、そんなこと…そんなの、ダメですっ…!」


その少女は大きな瞳をさらに見開くと、今にも泣き出しそうな顔でさらに白澤にしがみついた。

呆気に取られた小雪であったが、慌てて刀から手を離す。


小雪「えっ、あっ…やだ、ごめんね!しないから、そんな泣きそうな顔しないで!ね?」

ティール「…本当、ですか…?」

小雪「本当、本当!今のはちょっと、その…その人が、貴方に変なことをしないようにっていう注意喚起みたいなもんだから!」

ティール「…へ、変なこと…?」

小雪「そうそう!…って、鬼灯様!金棒下ろしてください、ほら早く!」


泣きそうになったその少女を見て、慌てて弁解する小雪。
その途中で、いつでも白澤を殴れるようにと金棒を構えていた鬼灯に気づき、小雪は慌てて止めに入った。

小雪に止められた鬼灯は、「チッ」と舌打ちをして金棒を下げる。

しかし鬼灯は、何かに気がついたようにその少女をじっと見つめた。


小雪「……鬼灯様?」

鬼灯(来)「…その方…白澤さんのことを、『にぃさま』と呼んでいませんでした?」

小雪「あっ!そう言われてみれば…」

白澤(来)「えっ、こんなに可愛いのに…僕の、妹…」

小雪「手ェ出せないからって落ち込むな変態」

白澤(来)「小雪ちゃんの当たりが強くて悲しい」

鬼灯(来)「ああ、その倫理観は一応あるのですね」

白澤(来)「僕を何だと思ってんだよ闇鬼神!」


ポンポンとテンポよく繰り広げられる会話。
頭上で行われている掛け合いに、少女は不思議そうな顔をしている。


小雪「っていうか、お師匠様が『にぃさま』ってことは……やっぱり貴方が、別次元とかいう場所から来たっていう……」

ティール「はい♪ティールですっ♪」


ティールと名乗った少女は、ふわりと、まるで桜の花びらのように優しく笑う。

すると、再びガラガラと扉の開く音がした。


ーーー

扉が開いたので、そちらを見てみたら……?


アイリア「あ、ティールちゃん。先に着いてたんだね、よかった…♪」


入ってきたのは、これでもか!というくらいに保護色(緑色)な女性だった。


小雪「(わ……美人さん…)」


扉を閉めて、アイリアはティールに話しかける。


アイリア「ティールちゃん、白澤様がすっっっごい顔面蒼白で探してたよ?

ティール「?」

アイリア「『妹がいなくなった…!』って」

ティール「??…兄様なら…ここに……」


いるですよ…?と、白澤(来)にくっついたまま、不思議そうに首をかしげているティール。

どうやら、彼が『別次元の』白澤だとは気づいていないようだ…。


アイリア「え…?あっ…あぁ、そういうことか…」


アイリアは白澤(海)から神気を貰い、育っている。
一発で自分の知る『白澤』とは違うと見抜いたようだった。


アイリア「(うーん、でも…違うって言いづらいなぁ……)」


ほわほわと嬉しそうに白澤(来)肉っつているティールを見て苦笑するしかないアイリア。


小雪「お師匠様、ちゃんと言った方がいいですって…」

白澤(来)「えー…でもこの子は僕にすっごい懐いてくれてるもん。この子の為なら、『兄様』にだってなれるよ!」


ティールの事を思ってなのか、それともただ単に自分が合法的に彼女に触れたいだけなのか…。

どちらかは分からないが、何かすごいことを言い出した白澤(来)。


アイリア「ティールちゃん、流石に別次元の白澤様の迷惑になっちゃうから…ね?」


離れよう?と説得を試みるアイリアだがティールは不思議そうな顔をするばかり。
『白澤の迷惑になる』と言われ、泣きそうな顔になってしまった。


ティール「にぃさま…迷惑…ですか…??」

白澤(来)「えっ!?う、ううん、迷惑じゃないよ!むしろもっと抱きついてくれて構わないよ?」


物凄いことを言いながら、可愛い〜♪と妹(仮)を抱き締め始める白澤(来)。


小雪「……お師匠様…物は言いようですよね…」

鬼灯(来)「妹として見る、じゃなくて、絶対に合法的に彼女に触れたいから、とかそんな理由ですよ」

小雪「確かに……」


そんなことを話す小雪と鬼灯(来)に気付いているのかいないのか…。

白澤(来)はティールを抱き締めたまま、とんでも提案をしてきた。


白澤(来)「妹なら、お兄ちゃんに一杯触れられたり、一緒に寝たりするのも大丈夫だよねー?兄妹の特権だもの♪」


言いながら、しれっとティールを抱き締めつつ、腰や尻を撫でている(笑)

当のティールはというと、白澤(来)の発言で、抱き締められて触れられるのは『兄妹の特権』だと認識してしまったらしい。


ちょっと、変なこと教えないでください…!by出現待ちの鬼灯(海)



ティール「一緒に、寝る…ですか…?」


白澤の問いかけに、お昼寝好き…♪ぽかぽか…♪となんだかずれた回答をするティールだった。


アイリア「ティールちゃん、その人白澤様だけど白澤様じゃないんだよ…?ね、迷惑かけちゃダメだよ…?」

白澤(来)「大丈夫、大丈夫♪迷惑じゃないし、むしろ可愛い…♪本当にそっちの僕が羨ましい…♪」


こんな可愛い妹に毎日懐かれて…♪とさらに彼女を抱き寄せようとしたら…


ガンッ!!!


白澤(来)の横を見慣れた金棒が高速でかすったのだった。


ーーー

店の壁に突き刺さった、その金棒。
右頬スレスレを横切ったそれに、ゲッと白澤(来)は顔を歪めた。


白澤(来)「おい、危ないだろ!!この子に当たったらどう、す……」


そこまで言って、白澤(来)は言葉を切った。

なぜなら、


鬼灯(海)「今すぐその子から離れていただけますか、白澤さん」

白澤(来)「ゲッ、2人目の闇鬼神…!!」


現れたのは、もう1人の鬼灯であった。

白澤(来)がティールに触れていることがかなり不快なようで、コメカミには青筋が立っている。


ティール「あ、鬼灯っ…♪」

小雪「うわあ、そっくり…」

鬼灯(来)「そっくりも何も、住んでいる世界線が違うだけの私ですね…」

鬼灯(海)「ああ、貴方が小雪さんですか。初めてまして、鬼灯と申します」

小雪「こんなに初めてじゃない "初めまして" があるんだ……あっ、小雪です。よろしくお願いします」

鬼灯(海)「どうぞよろしく」


鬼灯(海)が会釈をしてきたので、小雪も慌てて自己紹介をして頭を下げた。

すると、顔を上げた鬼灯(海)の視線は小雪の隣にいる鬼灯(来)へ。


鬼灯(海)「…で、貴方がこちらの世界の鬼灯ですか。初めまして、鬼灯です」

鬼灯(来)「初めまして。鬼灯と申します」

小雪「まって、想像以上に紛らわしい!もう混乱してきた」

白澤(来)「うわ、闇鬼神の増殖…見てるだけで具合悪くなるよ」

アイリア「ど、どっちがどっちだか……」


顔も服装も同じとなると、いよいよ紛らわしい。
小雪とアイリアが頭に?を浮かべ、白澤(来)は心底嫌そうな顔をしている。

すると、ティールがパッと白澤(来)から離れて鬼灯の元へと駆け出した。


ティール「鬼灯っ…♪」

鬼灯(海)「ティールさん、大丈夫ですか?」

ティール「うんっ♪」


ティールは一切迷う様子を見せずに鬼灯(海)へと抱きついた。


アイリア「凄い、ティールちゃんにはちゃんとわかるんだね」

ティール「うん…全然、違うから…」

鬼灯(来)「…なんでしょう、このフラれてないのにフラれたような感覚…」

白澤(来)「ざまぁ」


ズドォォンッ!

今度は白澤(来)の左頬スレスレを金棒が通り過ぎた。
今度は鬼灯(来)の金棒である。


白澤(来)「お前すぐ金棒投げんの止めろよ、ここ店だぞ!そっちのお前も!」

鬼灯(来)「ああすみません、条件反射で」

鬼灯(海)「貴方の顔を見ると、不思議と金棒を投げたくなる衝動に駆られますね」

白澤(来)「いらない所まで似てやがる…」

小雪「似てるっていうか、本人ですから…」


白澤(来)の言葉に小雪が苦笑いした時、またもや店の扉が開いた。

皆がそちらを向けば、現れたのは見覚えのある白衣の男。


白澤(海)「ニーハオ。ごめんごめん、女の子に連絡先聞かれちゃって……って、何これ。何事?」


やって来たのはもう1人の白澤(海)であった。

彼の目に映るのは、2本の金棒に挟まれている自分にそっくりな男。
そして2人の鬼灯と、その片方に抱きつくティール。
驚いたような表情の小雪とアイリア。

店に入るなり、何ともカオスな状況が視界に飛び込んできたのであった。


ーーー

目の前に飛び込んできた光景に一瞬固まる白澤(海)だが、鬼灯(海)にくっつくティールを見ると


白澤(海)「ティール、よかった。ここにいたんだね」


迷わずにティールの方に駆け寄った。

どうやら、彼は妹が失踪(という名の先行行動)をして探し回っていた(時に女性に連絡先を聞かれて対応していた)らしい。


白澤(海)「怪我とかは?してない?」


急に居なくなったら心配するだろ?とティールをぎゅぅっと抱き締める。

過去に誘拐だのなんだのに、遭った事があるので、本当に心配していたんだよ、と。


ティール「(こくり)だいじょぶ…」

白澤(海)「それなら、よかった…」


兄に抱き締められて、頷くティール。
そんな彼女にひと安心。

そして本当に心臓に悪いから…急に居なくなるのだけは止めて……と、ティールの頭を撫で撫でしながらホッと一息吐いていた。


鬼灯(海)「…もしかして、お兄さんに何も言わずにここに来たんですか?」

ティール「え…あ…うぅ…」


どうやら図星らしい。
白澤(海)に抱き締められているティールの頭を鬼灯(海)が撫でながら聞くと…、彼女は肯定の意でこくりと頷いていた。


小雪「ティールちゃん、それは…さすがに…。そっちのお師…白澤様も心配するの、当たり前だよ…」

鬼灯(来)「見た感じ、彼女の『本当の』お兄さんみたいですしねぇ…」


兄として接する!と宣言していたお前みたいに、下心丸出しじゃねぇし。と白澤(来)をどこか冷めた視線で見つめている。


白澤(来)「なんだよ、この子が僕に懐いてくれてるんだから、別にいいじゃないか…!」

アイリア「あ、あははは…ティールちゃんは、鬼灯さんの事は分かっても、白澤様の事は…分からないみたいですしね…」


現に今、白澤(来)に手を差し出されており、ティールは自分を抱き締めている白澤(海)と白澤(来)を見比べて、困惑している(笑)


小雪「お師匠様、懲りずにティールちゃんにこっちにおいで〜♪って言ってるよ…」

鬼灯(来)「見分けが付いてないとはいえ、彼女自身拒絶しているわけでもないですしね…。拒絶されたら、アイツも諦めr」

小雪「ると思います…?」

鬼灯(来)「思いません」


小雪の言葉に、即答する鬼灯(来)だった(笑)


白澤(来)「つーか、さっきの!」

鬼灯(海)「はい?」

白澤(来)「さっき、そっちの僕がそティールちゃんを抱き締めたとき、なんも制裁なかったよな…!?」


僕だってその子の『兄』として接するって決めたのに、腑に落ちないんだけど!!と白澤(来)は大変ご不満のようだった(笑)

ーーー


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