銀桜録 試衛館篇 | ナノ


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名前「私は女だけど、木刀を握ってる。護身術程度のつもりはなくて、本気で剣術を教わってる。それが私にとって正しい道だと思ったから。…これって、一君も一緒なのかなって。私も一君も、自分が正しいと思った道を歩いてる。例えそれが普通の人とは違う道だとしても、私達はその道を選んだ。悩んで、沢山考えて、正しいと思った道を選んだ。だから、それをおかしいだなんて私は思わないよ」


斎藤の心の中に、一筋の光が降り注いだ。
たった一筋でも、それは眩しくて柔らかくて、そして温かい。

冬の闇をも彼女は暖かく照らす。
暗くて寒い冬の後は、春。
彼女は暖かい、まるで春の光。
裏表の無い真っ直ぐな名前が言うからこそ、その言葉は斎藤の心に響いた。


名前「…あっ、ごめん!もしかして、何か気に障るようなこと言っちゃった…?」


何も言わない斎藤に不安になったのか、慌てて謝ってくる名前。
気に障るなど、そんな事があるはずがない。
彼女の言葉は、斎藤の胸のつかえを取り払った。


斎藤「…いや、そんな事はない。ただ…少し、意外に思っただけだ」

名前「意外…?」

斎藤「…あんたは、強い意志を持っているのだな」

名前「え?そうかな?」


首を傾げながら立ち上がった名前。
名前にとって先程の言葉は、特に何も意識せず、自分の考えをそのまま述べただけのようだ。

彼女はきっとこれからも、自分でも知らぬうちに多くの人を救っていくのだろう。
真っ直ぐな、温かい言葉で。


斎藤「…体が冷えているようだな。そろそろ戻った方がいい」


斎藤は名前の赤くなった指先や頬を見て、彼女の背中を優しく押した。
名前は「そうだね」と、笑って頷く。

二人が道場に戻る中、冬の曇り空から太陽が顔を覗かせた。
降り注ぐ光は、優しく雪だるま達を照らしていた……。

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