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名前「わあーっ、凄い!左之さんはいつもこんな景色を見てるんだね!」
原田「まあ、そうだな」
名前「確かにこれは平助も小さく見える」
原田「だろ?」
藤堂「…オレどんだけ身長の事で揶揄われんの」
名前「ねえごめんって!拗ねないで平助!」
沖田「平助はまだ十七だから希望はあるよ、頑張れ」
藤堂「なんか腹立つんだけど!?」
今度は藤堂が頬を膨らます番であり、三人はそれを見て笑い声を上げた。
冬の空気は四人の声を乗せてゆき、静かな庭に響き渡る。
土方「おいお前ら!朝からうるせ…って、何やってんだ…?」
名前「あ、土方さん!おはようございまーす!」
藤堂「おはよう土方さん!」
四人の声が騒がしかったらしく、土方が歩いてやって来た。
しかし、原田に抱き上げられている褞袍に包まれた名前を見て、土方の目が点になっている。
名前「土方さん見てください、左之さん凄いんですよ!高い!綺麗!気持ちいいーっ!」
土方「…餓鬼か、お前は…」
原田「ははっ、たまには良いじゃねえか!」
原田の腕の中でキャーキャーはしゃぐ名前を見て、土方は小さく溜息を吐いた。
しかし名前を見る彼の本紫色の目は穏やかなものだった。
名前が何歳になっても、土方にとって可愛い妹分であることに変わりはないのである。
土方「そろそろ切り上げろ、朝飯だ」
名前「はーい!左之さんありがとう、楽しかった!」
原田「おう。このくらいなら、いつでもやってやるよ」
原田が名前を縁側に下ろすと、名前は満面の笑みを浮かべて礼を言った。
沖田「…平助、ちょっと羨ましかったでしょ」
藤堂「え、何が!?何に!?」
沖田「平助も高い所から見下ろしてみたいんじゃないかと思って」
原田「悪いな平助、これは名前限定だ」
藤堂「いやいらねーよ!何が悲しくて左之さんに担がれなきゃならねえんだよ!」
名前「あははははっ!」
すっかり冷えきった風が吹き抜けていく。
それでも、試衛館には温かい笑い声が響いていた……。
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