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──── 焼き芋を食べ終えた皆は、稽古へと戻って行った。
名前は一人、枯葉の後片付けをしていた。
……しかし。
"藤堂「周斎先生と名前もあんまり似てなくねえ?」 "
先程藤堂に言われた言葉が、名前の頭の中でぐるぐると回っていた。
すると、此方に向かってくる足音が聞こえてくる。
近藤「 ─── 名前」
名前「あ、兄様!どうかなさいました?」
やって来たのは近藤であった。
しかし、名前が振り返ると…近藤は、悲しげな瞳をしていた。
名前「…あの、兄様…?」
首を傾げれば、ゆっくりと名前に歩み寄る近藤。
そして近藤は、自分よりも一回りも二回りも小さな名前の体をぎゅっと抱きしめる。
彼が今何を思っているのか、名前はその瞬間に漸く理解した。
名前「…兄様。私は何ともありませんよ。兄様も父様も…試衛館の皆も。私にとって、かけがえのない家族ですから」
素直に近藤の胸に顔を埋めて、自分の思いを告げる名前。
彼女を抱きしめる近藤の腕に、力が篭った。
近藤「…ああ。お前は俺の…大切な、自慢の妹だ」
名前「はいっ!」
いつもと同じように太陽のような明るい笑顔を見せる名前。
彼女の笑顔を見て、近藤も穏やかな表情を浮かべる。
そんな二人を、腕組みをしながら物陰から見守る者が一人。
土方「(…心配は要らねえか)」
少女が普段通りである事を確認した土方は、彼等に悟られぬよう、静かにその場を去ったのであった……。
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