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すると、その様子を見ていた藤堂が芋を頬張りながらポツリと呟いた。
藤堂「…そういえばさ、近藤さんと名前って兄妹なのにあんまり顔付き似てねえよな」
その言葉に、焼き芋に齧り付こうとしていた名前の動きがピタリと止まった。
皆の視線が近藤と名前に集中する。
しかしその中で呆れたように藤堂を見るのは原田である。
原田「おい、近藤さんは確か此処の養子になったんだろ?そりゃ顔は似ねえだろうが」
藤堂「あっ、そうか。…だけどさ、周斎先生と名前もあんまり似てなくねえ?」
藤堂のその言葉には、「確かに」と頷く者や「そうか?」と首を傾げる者がいた。
原田「…確かに、そう言われてみりゃあんまり似てねえかもな」
永倉「ん、そうか?怒った時の顔とかそっくりじゃねえか、こうやって目をつり上げて眉顰めてよ」
そう言って永倉は眉を顰めて目付きを鋭くする。
どうやらそれは周斎の真似らしく、それを見た沖田が「新八さん、ちょっと似てる」と笑った。
しかし藤堂は納得していない様子である。
藤堂「…んー、なんつーか、こう…周斎先生は顔とか体が全体的にゴツゴツしてるだろ?だけど、名前は線が細いっつーか」
永倉「そうか?俺はよくわかんねえなぁ…」
原田「性格もあんまり似てねえよな」
沖田「性格は近藤さんに近いんじゃない?一緒に居れば性格も似てくるっていうし。近藤さんは名前から子供っぽさを抜いた感じですよね」
…いつもなら此処で、「子供っぽくないし!!」という名前の反論が入るところであった。
しかし ─── 。
名前「……」
黙りこくったまま、ぼんやりと焼き芋を見つめている名前。
だが、その瞳の色はいつもよりも明らかに暗くて。
今、彼女の瞳に映っているのは何なのだろう……。
彼女の様子に、その場の空気が戸惑いを含み始める。
沖田「…名前?どうしたのさ、お腹でも痛いの?」
名前「っ!」
しかし、沖田の声で焦茶色がハッといつも通りの明るさを取り戻した。
名前「…あっ、ごめんごめん!ぼーっとしてた、何の話だっけ?」
沖田「だから、近藤さんは名前から子供っぽさを抜いた感じだよねって」
名前「あー、確かに…って、ちょっと!それ私が子供っぽいって言ってるでしょ!?」
沖田「あ、バレた」
名前「は、腹立つ…!」
沖田「だってさ、一君を見てみなよ。君と一つしか違わないのにあんなに大人びてるんだよ」
名前「平助に言いなよそれは!」
藤堂「またオレに飛び火したんだけど!!」
近藤を挟んでギャーギャーと言い合う名前と沖田。
それを見て、その場にはほっとしたような穏やかな空気が戻ってきた。
土方「…あんまり似てねえ家族もいるだろ。俺も姉貴や兄貴とはそんなに似てねえからな」
名前「…!」
永倉「おっ、そうか。土方さんは末っ子だったな」
藤堂「土方さんって全然弟って感じしねえよなー」
そこからは自然と、土方の兄弟のことについて話が移っていった。
しかし、土方がわざと先程のような発言をして話を逸らしたことに気づいたのは、この場でたった一人だけ。
名前「(…ありがとうございます、土方さん)」
心の中でお礼を言う。
そして、今度肩揉みでもしてあげようかと考える名前であった。
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