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─── 名前達が川に向かうと、河原では既に土方達が待っていた。
藤堂「あっ、名前!一君!」
藤堂の声が響いたのと同時に、パッと斎藤は名前の手を離した。
それが少し名残惜しいと感じる自分は強欲だと名前は思う。
永倉「おっ、見つかったか!良かったぜ!」
土方「ったく、何やってやがんだ名前!!」
名前「ひいぃっ、ごめんなさい!落し物を届けてました!!」
藤堂「わ、総司の予想的中じゃん。すげえ…」
沖田「僕は君の事なら何でもお見通しだからね」
名前「よくわからないけど何か腹立つ…」
一先ず、この人混みで全員集合出来ただけでも良しとしよう。
どうやらもうすぐ花火が始まるようだ。
藤堂「なあなあ、もうちょっと見えやすい所に行かねえ?」
永倉「確かに此処は屋台に近いから人出がすげえな」
土方「そうだな、移動するか。また何処かの馬鹿が迷子になっても困る」
名前「土方さん酷い!さっき謝ったのに!」
土方「あ?別にお前の事とは言ってねえだろ」
名前「ほぼ言ってましたよ!思い切り私の方見て言ってたじゃないですか!」
原田「まあまあ、落ち着けって」
名前「うぅ…」
ギャーギャーと土方に食ってかかる名前を慰めるのは原田である。
土方が歩き始めたので名前達も彼について行く。
名前の右隣を沖田が、左隣を原田が歩いていた。
そして沖田はニヤニヤと笑みを浮かべていて。
あ、これ何か言われるやつだ。
名前はそう確信していた。
案の定、沖田はこっそりと耳打ちをしてくる。
沖田「ね、さっき一君と手繋いでたでしょ?」
名前「えっ、見てたの!?」
沖田「バレバレだったけど?」
見られる前に繋いだ手を離したつもりだったのだが、どうやら沖田にはしっかりとバレていたようだ。
すると、沖田の耳打ちが聞こえていたらしく、原田も会話に入ってくる。
原田「遂に進展したのか?」
名前「いっ、いや、そんなんじゃ…!ていうか左之さんも見てたの!?」
原田「バレバレだったぞ」
沖田「えっ、左之さんも恋する名前に気付いてたの?」
名前「やめてその言い方」
原田「此奴から聞いたんだよ」
沖田「なんだ、じゃあ声潜める必要なかったな」
名前「いや潜めてね、前の平助達に聞こえちゃうからね」
しーっ、と口元に指を当てる名前に、「はいはい」とでも言いたげな面倒くさそうな顔で沖田は頷いた。
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