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沖田「 ─── あれ、平助。名前は?」
土方に呼ばれ、皆の所へと戻ってきた藤堂。
しかし沖田の言葉に彼は首を傾げた。
藤堂「え?何言ってんだよ、名前なら後ろに……って、あれ?」
先程確認したら自分の後ろをついて来ていたはずなのに、名前の姿が無い。
一体いつ居なくなったのだろう。
土方だけではなく、原田や永倉、沖田までもが大きな溜息を吐いた。
土方「っとに彼奴は!はぐれるなと言ったばかりじゃねえか!!」
永倉「まあ、この人混みじゃ仕方ねえよ。彼奴、小せえからな」
藤堂「悪ぃ、皆…オレがちゃんと引っ張ってくればよかったのに…」
沖田「別に平助は悪くないよ。きっと名前のことだから、落し物でも拾って届けに行ってはぐれたんじゃないの?」
原田「有り得るな」
こんな時でも沖田の推理は命中している。
しかしそれが当たっているのかどうかわかる者は、今この場には居ない。
……すると。
斎藤「……」
土方「お、おい、斎藤!何処に行くんだ?」
斎藤「…名前を探してきます」
今まで黙って話を聞いていた斎藤が、来た道を足早に引き返し始めた。
そして彼の白い襟巻きと黒い着物は、あっという間に人混みに紛れて見えなくなってしまったのである。
この状況で斎藤が一番最初に動いたというのが皆にとっては何だか意外であり、残された五人はポカンとして斎藤が歩いて行った方向を見つめていた。
沖田「…って、ぼーっとしてる場合じゃないでしょう。僕らも探しましょうよ」
土方「お、おう、そうだな。手分けして探すぞ」
永倉「合流は何処にするんだ?」
原田「…この屋台の通りを抜けたら川があるだろ?花火も彼処であと半刻(一時間)もすれば始まるからよ、そこでいいんじゃねえか?」
土方「そうだな。じゃ、とりあえず半刻後に川に集合だ」
土方の言葉に四人は頷く。
そして五人も別れて名前を探し始めたのである。
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