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沖田「…だけどさ、お花見の時の一君も…って、何これ?」
名前「えっ、何?どれ?」
何か言いかけた沖田だったが、途中で言葉を切って目を瞬かせた。
どうやら何かを見つけたらしい。
名前も沖田の後ろから引き出しの中を覗き込む。
沖田が取り出したのは一冊の冊子であった。
その表紙には『豊玉発句集』と書かれている。
名前「…発句集?」
沖田「そうみたい。ほら」
名前「『差し向かう心は清き水鏡』…?何これ、どういう意味?」
沖田「わかんない」
句の意味がわからず、名前と沖田は顔を見合わせた。
だが、どうやらこの『豊玉発句集』は土方の考えた俳句を書くための句集のようだ。
しかし作ったばかりなのか、書かれているのはこの一首のみである。
沖田「あはは、いい物見つけちゃったね。まさかあの人に俳句を詠む趣味があったなんて」
名前「ね!それに、もしかしたらこれから増えていくのかも」
沖田「そうかも。これは定期的に見に来なきゃ」
名前「賛成!見る時は私にも教えてね」
沖田「勿論。君がいなきゃつまらないし」
そう言って沖田は句集を寄せると、再び引き出しの中を漁り始める。
すると、またもや何かを見つけたようだ。
次に出てきたのは紙の束であった。
どれも『土方歳三様』と書かれている。
名前「…これ、文だよね」
沖田「多分。実家のお姉さんとかからかな」
沖田と名前は片っ端からその文を見ていく。
だが、その内容に二人は目を見開いた。
名前「…ねえ、これ恋文じゃない!?」
沖田「うわあ、こっちも恋文だ」
名前「何人から貰ってるの、これ…」
驚いたことに、その文は全て恋文だったのである。
しかも一人として同じ女性はおらず、数人の女性から貰った物のようだ。
沖田「…何だか気に食わないなぁ」
名前「土方さん、結構もてるみたいだよね」
沖田「確かに顔は良いのかもしれないけど。でも、黙っていればの話だよね」
名前「言えてる」
沖田の言葉に名前はうんうんと頷いた。
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