銀桜録 試衛館篇 | ナノ


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沖田「だけどさ、明らかに距離は近くなってきてるよね」

名前「えっ、そうかな?」

沖田「うん、お花見して以降は特にさ。…っていうか、それこそお花見の時はすっごく良い雰囲気だったじゃない」

名前「えええっ!!?」


確かに花見をしたあの時は、いつも以上に話し込んだ気がする。
だが、傍目から見ればそういう雰囲気に見えていたのだろうか。
名前は真っ赤に染まった顔を押さえた。


名前「べ、別にそんなんじゃないよ!ただ、桜が綺麗だねって話してただけだし!」

沖田「えー、本当に?」

名前「本当だって!!」


嘘じゃない、と言わんばかりに名前は大きく首を縦に振って頷いた。
沖田は未だに怪しむような目を向けてくるが。


名前「…っていうかそもそも、一君は私の事をそういう風に見てないよ。だから、良い雰囲気に見えたんだとしたら、それは気の所為だと思う…」

沖田「…何、いつになく弱気だね。気持ち悪いなぁ」

名前「なっ、気持ち悪いって何よ!?」

沖田「あはは、ごめんごめん。本当の事だけど」

名前「謝る気無いでしょあんた」


いつも通り飄々としている沖田に、名前は大きな溜息を吐いた。


沖田「じゃあ、いつも何の話してるの?最近よく話してるじゃない」

名前「何って…世間話とか?」

沖田「ふうん」

名前「聞いた割に興味無さげだね!?」

沖田「いや、意外と普通だなと思って」

名前「…総ちゃん、私の事なんだと思ってるの」

沖田「女の子の皮を被った猪」

名前「引っぱたくぞ、もう!」


ぷくっと頬を膨らました名前を見て、沖田はケラケラと笑いを零した。
そして膨れている名前の頬をつんつんと突っついている。
完全に面白がられているようだ。


沖田「で、他には?世間話だけ?」

名前「えー、なんだろ…あっ、そうそう!最近は刀の話を聞いてるよ」


名前の言葉に、沖田は首を傾げた。


沖田「刀?名前って刀好きだったっけ?」

名前「いや、全然知らないから教えてもらってるの。一君、すっごく刀に詳しくてさ。説明も分かりやすくて面白いの」

沖田「へぇ、そうなんだ」

名前「一君ね、普段はあんまり喋らないけど刀の話になると沢山喋ってくれるの。凄く楽しそうでさ、つい私も色々聞いちゃうんだよねぇ。そうしたら結構話し込んじゃって」

沖田「…ふうん」


…なんだ、結構良い感じじゃない。
幸せそうに斎藤を語る名前を見て、沖田はそう思った。

名前は話上手だが、同時に聞き上手でもある。
相手から話を引き出すのが上手いのだ。
それに加えて、どんな事にも興味を持って吸収していく好奇心旺盛な性格だ。

寡黙だが好きな物の話になると饒舌になる斎藤と、何でも吸収する名前……。
案外、二人は相性が良いのかもしれない。
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