銀桜録 試衛館篇 | ナノ


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──── 文久元年 六月。

桜が散ったのがついこの間のように感じる中、季節は夏へと入っていた。
道場は熱気が篭もりやすいため、定期的に道場から出て涼まねばならない。

そのため名前と沖田は休憩がてら、土方の部屋で遊んでいた。
ちなみに土方は今、商売に出ているため夕方までは帰って来ない。
土方の部屋で何か面白い物を探そうと沖田に誘われ、名前も彼に付き合ってついて来たのである。


沖田「…それで?最近どうなの?」

名前「えっ、何が?」

沖田「何って、一君との事に決まってるじゃない」

名前「えっ!?…って、痛いっ!!」

沖田「何やってんの」


唐突な沖田の質問に動揺した名前。
その動揺の反動で、文机にガンッと思い切り膝をぶつけてしまったのである。

名前はぶつけた膝を摩りながら、沖田を見上げた。


名前「一君との事って…?」

沖田「もう、とぼけないでよ。進展はあったのかってこと」

名前「進展って…一君が来てからまだ三ヶ月しか経ってないよ」

沖田「もう三ヶ月だよ」


沖田に言われ、名前は考え込む。
この三ヶ月間での進展と言えば……。


名前「…名前で呼ぶようになって、敬語も使わなくなった」

沖田「そんなの見てればわかるんだけど。いつの話してるの」

名前「…一緒に稽古もするようになった」

沖田「だから、見ればわかるって。何か他に無いの?逢引きしたとか」

名前「逢引き!?そんなのあるわけないじゃん!」

沖田「なんだ、つまんないな」


名前が真っ赤になって否定すれば、沖田は退屈そうに口を尖らせた。

実際、名前と斎藤関係にこれと言った進展はない。
だが強いて言うならば、名前が斎藤の隣にいるのを見かけるのが多くなったということだろうか。

勿論名前は他の皆とも毎日談笑しているが、この二ヶ月間は特に斎藤と共に何か話している姿を見かけることが増えてきた気がする。
そんな事を沖田は思い返しながらも、土方の文机の引き出しを漁る。
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