銀桜録 試衛館篇 | ナノ


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─── 数日後。


名前「でえりゃあああああ!!!」

藤堂「うおおおっ!!?」

永倉「一本!!」


熱気が籠る道場で、一際威勢の良い女の声が響く。
それは、完全に復活した名前であった。


永倉「気合い入ってんなぁ、名前!」

名前「うん!ここ数日は寝たきりだったからね、昨日なんてもう動きたくて体がうずうずしちゃって」

藤堂「猪かと思った怖い…」

名前「平助酷い!とりゃっ」

藤堂「いでででっ!髪引っ張んなよ!」

名前「引っ張りたくなる髪なのが悪い!」

原田「元気だなぁ、お前ら」


数日前まで生死の境をさ迷っていたとは思えないほど、木刀を振るう彼女の姿は生き生きと輝いていた。
見合い話を断る事が決まったため、不安の種がすっかりと消え去ったのである。

名前の決断を否定する者は誰一人としておらず、皆温かく受け入れてくれた。


沖田「病み上がりで何でそんなに元気なのか不思議なんだけど」


休憩に入った名前に声を掛けてきたのは沖田である。

沖田とは名前が倒れる前に少し仲違いのような状態になっていたが、その蟠りはすっかりと消え去っていた。
沖田が近藤達に直談判してくれた事を知り、名前は彼に感謝を伝え、二人の絆はより一層深まったのである。


名前「毎日家事と畑仕事して商売もやって稽古に参加してるんだから!私の体力舐めないでよね!」

沖田「うわあ、体力お化けだ」

原田「こんな小せえ体の一体何処にそんな体力が入ってんだ?」

名前「小さいって言わないで」


休憩を終えた名前はぴょんっと立ち上がると、ある人物の所へと駆け寄っていく。
それは、素振りをしている斎藤であった。


名前「一君っ!ちょっとだけ手合わせしてくれない?」

斎藤「…あんたか。よかろう」

名前「やった!」


ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表現する名前に、斎藤は小さく口角を上げた。

あの日、斎藤に想いを告げた名前だが、二人の関係性が変わることは無かった。
お互いに、剣を握って共に励む現在のままの関係を望んでいたのだ。
気まずくなるわけでもなく、以前と変わらず "道場の仲間" という関係が続いている。

強いて変わった事を挙げるのならば、休憩中に二人でお茶を飲みながら話し込んでいる姿を見かけるのが増えたことくらいだろうか。


名前「 ─── よしっ!お願いしますっ!!」


漸く戻ってきた、今まで通りの平和な日常。
試衛館の太陽は、今日もひたすら剣を振るう。

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