お久しぶり

ゆらゆらと揺れる一つに束ねられた赤みの強いオレンジ色の髪に、緑色の瞳。
色白な肌に、可愛らしい顔立ちと華奢な体つき。
そこら辺の女子よりかは可愛らしいであろう容姿をした“男”――三日月ユリは、久しぶりの故郷に目を輝かせていた。

「ここは、何も変わってないな! 相変わらず人が多い! ええっと、オジサンが待っててって言ってたのは――うん! わかんないからそこら辺で待っとこう!」

“自分がいた頃と何も変わらない”と嬉しそうに叫びつつ、ユリはスマホのチャットアプリに送られていたメッセージを開く。
が、肝心のメッセージの説明が彼には理解できなかったのか、すぐに考えるのをやめ、近くにあったベンチで足をぶらぶらさせながら待つことにしたようだ。

「……暇だ」

しかしそれも長続きせず――結局、彼はキャリーケースからノートとペンを引っ張り出し、ずっと我慢していた自身の趣味に走ることにした。

周りの視線などなんのその、ユリからしたらそんなもの関係などない。
今の彼にあるのは、今頭の中に浮かんでいる妄想の賜物を一刻も早く書き残さねばという、ある意味使命のようなものだけだった。

「うんうん! やっぱりオレは天才だ! こんな素晴らしい歌を作れるなんて! ああ! もっと浮かんできた!」

周りの視線など気にすることなく、公共の場で叫び、そして歓喜の声を上げながらノートに楽譜を綴っていくその姿は誰がどう見ても“変人”であろう。

“おかーさん、あの人、どうしたの?”
“しっ! 見ちゃいけません!”
そんな会話がチラホラと聞こえ始めた頃――その少女は来た。

少女はユリを見た途端、慌てた様子で駆け寄り、声を掛けた。

「ユリ君、ですよね? ……また、書いてるんですか?」
「〜♪〜♪〜♪……ん? お前誰だ? 宇宙人か?」

楽しそうに書き綴っていた手を止め、ユリは少女の方へと顔を向ける。
が、誰だかは分からないのか、キョトンと首をかしげた。

「んー、オレの名前知ってるってことは、お前は知り合いってことだろ? あっ、まって! まだ言わないでね! もうすぐ思い出せるから! ……!! お前、ハルか!」

“ちょっと大人びてたからわかんなかった!”と、無邪気に笑いながら言うユリに、少女・ハル――基、七海春歌もまた、“相変わらず無邪気な笑顔をする人ですね”と言いながら笑うのだった。
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