The beginning of all

肩より少し上までの長さの銀髪に、左右異なる瞳。
それに加えて容姿は整っており、体つきも華奢で、どこか儚げな雰囲気を醸し出している。
まるでどこかの漫画に出てきそうな、そんな容姿をしている少年――名を、ユズハ=ゾルディックと言う。

ユズハは生まれつき、酷く体が弱かったために(その他にも様々な理由はあるが)家族たちから過保護にされていた上に溺愛されていた。

例えばそう、彼には双子の兄がいる。
けれども、その双子の兄でさえも、ユズハに対しては過保護であり、その上同い年にも関わらず、ユズハよりもある意味では経験豊富である。

そんな双子の兄もまた、家族からは溺愛されていたのだが、それでもある程度仕事で外に出たりなどは可能であった。

それに比べ、ユズハは病弱な体や左右異なる瞳のこともあり、外に出る時(ユズハの場合、家の庭のことである)は必ず誰かが傍におり、家の敷地の外に出ることは一度たりとも許されたことは無い。

初めのうちは何とか外に出られないかと考えていたユズハも、今では諦めたのか、毎日自室の窓辺で椅子に座りながら、本を読んで一日を過ごす――という、なんとも窮屈な生活をしていた。

それでも、ユズハの双子の兄であったり、年の離れた2人の兄であったり、歳の近い弟であったりと、ユズハの兄弟はよく病弱な兄弟のことを気にかけ、彼の自室へと積極的に足を運んでいたし、彼の家にいる使用人もユズハのことを気にかけ、彼の体の調子が良ければ積極的に外で散歩をしていた。

ユズハ=ゾルディックという少年の生活は、箱入り娘ならぬ箱入り息子と言われてもおかしくないような生活だったのだ。

それに加え、彼の家は特殊だった。
彼の家が代々受け継がれてきた暗殺一家ということもあり、食事の中に毒が含まれているのはこのゾルディックという家ではごくごく普通の事だ。

それはもちろん、体の弱いユズハにも行われていたことであり、彼の食事にも微量ながらに含まれている(あまり含みすぎると倒れるため)。

そのような生活が“普通”ではないと知ったのは、彼の兄の一人であるミルキ=ゾルディックという男が貸してくれた本に書かれていたからであろう。

その本を見て、ユズハは人知れず納得してしまったのだ。
自身の家は普通ではないということに。
自身の家は異様であるということに。

その事を知ってもなお、ユズハは何も行動に移そうとはしなかった。
否、出来なかったと言うべきか。

それは、ユズハが自分の家が異質であると知ってしまった翌日から、ユズハの生活はより窮屈なものになってしまったからだ。

どこにいても、何をしていても感じるようになった、視線。
彼の母親は『見守っている』と言っていたが、実際は監視しているの間違いじゃないのかと、何度考えたことか――それを知るのはユズハ本人のみである。

ただでさえ、傍に使用人か家族のどちらかがいるのに、それに加えられたようにしていつも感じる視線に、他の家族よりも訓練が控えられているユズハが何か行動を起こせるはずもなく――今の今まで、大人しく過ごしていたわけなのだが。

『ユズハ、家出しよう!』
『へ、キル!?』

どうやら、ユズハの双子の兄はそういかなかったらしい。
スケボー片手にユズハの腕を掴み走り出す少年の名は、キルア=ゾルディック。
恐らく、ゾルディック家の長兄といい勝負ができるのではないかという程、ユズハに対して過保護である彼の双子の兄である。

『イル兄様たちにバレでもしたら……!』
『兄貴達ならいないから、逃げるなら今しかないって!』

キルアの口調は軽いものだったが、ただひたすらに前を見るその目は本気だと、物語っていた。

これは、12月のある日の出来事。
キルア=ゾルディック、並びにユズハ=ゾルディックは、窮屈な家を飛び出した。
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