全寮制男子校。王道学園。

*****

よく働くな…。

副会長を見て思う。

片付けが壊滅的に出来ない癖に、片付けに挑戦した会計のせいで散らかった生徒会室を副会長が片付けている。…俺?俺はソファで寝転がって観察してるが、なにか。

散らばったプリントを仕分けていたと思うと、今度は本棚に資料を収め始めた。

しばらくすると。

「こんなものですかね…」

終わったらしい。…すげぇ。めちゃくちゃ綺麗になってる。一時間でここまで片付けるとか、…人間か?

「いてっ…」
「私は人間ですよ。…失礼なことを考えないでください」

いやいや。俺なんも言ってねぇよ。思考読めるって、マジで人間じゃねぇ。

そんなことを考えつつ、細く綺麗な指ででこぴんされた額をさする。…じんじんする。

副会長はいつの間にか消えていた。と思ったら、お茶を淹れてきていたらしい。…俺の分は無しか。

「働いてない人の分を淹れる程、私は優しくありません」
「…口に出してたか?」
「出してませんよ。…その年でもうボケたんですか?」
「ボケてねぇよ」

口に出してないのに、なんで分かるんだよ。怖ぇよ。

副会長は自分の席に着いて仕事をし始めた。…ホントによく働くな。

銀縁のシャープな眼鏡を掛けて仕事してんのを見ると、デキる奴って感じだな。…いや、マジでデキる奴なんだけどな。

時折髪の毛が落ちてくるのか、白魚のような指で耳に掛ける。

よく働くのに、全然荒れてなくて細くて白い綺麗な指。

カタカタカタ…

キーを叩く音を聴きながら、指を見ていると段々眠気がやってきた。あー…、眠……。

眠気に逆らわず、瞼を閉じた。

*****

ふ、と意識が浮上した。目を開けると寝る前と変わらず、ほぼ同じ姿勢で仕事をしている副会長がいた。時計を見ると、約一時間寝ていたらしい。我ながらよく寝たな。

身体は動かさず再び副会長を観察してみる。よっぽど集中してるのか、俺が起きたことに気がつかない。

やっぱランキングに入るだけあって美人だな…。

観察していたら少し悪戯心が湧いてきた。気付かれないように、そーっと身体を起こす。

と、毛布が掛けられているのに気付いた。…掛けてくれたのか。気付かなかったぜ…。起こさないでくれた上に、毛布まで掛けてくれるなんてな。

だが、悪戯心が消えたわけじゃない。

静かに静かに副会長の後ろに立つ。…ここまで来ても気付かないって…。凄い集中力だな。尊敬するわ。

ま、休憩は大事だし?ちょっと中断させますか。てことで。

ぎゅっ

「わっ?!…な、何するんですかっ!!」
「んー?よく働くな、と思って」
「…あなたがやらないからでしょう」

ため息。やってほしいなら起こせばよかったのに。

「離してくれませんか?」
「やだ」
「…」

あ、なんか黒いものが出てきた気がする。まぁ、いいか。構わず右手を取ってみる。

「やっぱ綺麗な指…」
「は?」

繊細なこの手がよく働くと思うと愛おしくなった。だから、思わず。

ちゅっ

指先にキスしてしまった。

「っ!?」
「ふっ…」
「なっ、何して…!」
「ん?何ってキス」

顔を真っ赤にして見上げてくる副会長が可愛く見えた。

ちゅっ

唇にキスをして離れる。

「適度に休憩しろよ」

真っ赤で固まっている副会長に怒られる前に仕事を始めるとするか。

生徒会で一番の働き者な副会長は美人で可愛い。それは、俺だけが知っている―――