name change
君はマシェリ(白石)







「名前…なんで半袖なんや」


『ジャージ忘れちゃった…』


「…はぁ」

君 は マ シ ェ リ



冬が近い秋のことやった。久しぶりに体育が男女合同になったんは女子の先生が休みやったからや。まぁ俺にしたらいつもバラバラやった体育の授業を名前と一緒にやれるっちゅーんは嬉しい。女子はいつも体育館で男子はいつも外、せっかく同じクラスやのにバラバラで授業受けるんはほんまに寂しいんや

そんなことを謙也に言うたら眉をピクピクさせ「惚気んなやドアホ!」と涙目で言われた
しゃーないやん、惚気ずには居られへんねや。とまぁ、そんなウキウキ気分やったんに女子更衣室から出て来た名前はこない寒いのに半袖で出て来よった


「忘れたて…他クラスの子にも借りたら良かったやん」


『違うの、ジャージ忘れたのに気付かなくて…さっきカバンの中見て気付いたの』


「…風邪引いてまうやろ?これ着とき?」


俺は着とったジャージを名前の肩にかけた。冷たい空気が俺の腕に絡みついてくる。これは…あかんな。名前は体小さいし、こんな冷たい空気ん中半袖なんかで居ったら確実に風邪引いてまう。それだけは絶対に避けたい
彼女を心配せぇへん彼氏なんかこの世に居らんやろ?


『でもっ、蔵が風邪引いちゃうじゃん…!』


「俺は大丈夫や、今日1000メートルやし。名前は今日何するん?」


『バドミントンだったかな?』


「ほら、俺は汗かくけどバドミントンなんかそない汗かかへんやん」


『そうだけど!!』


「あかん、着とき。」


そう言えば名前は渋々といった感じでジャージに腕を通した。『暖かい』なんてふにゃっと笑って言うたもんやから、俺の心もそりゃあ、熱を帯びたように中心が温かくなった


「ほら、急がな遅れてまう」と名前の腕を掴んでグランドまで急いだ。途中すれ違ったオサムちゃんに「ラブラブで羨ましいやっちゃな」なんて言われてしもたけど俺は俺で「オサムちゃんもはよ嫁さん作りや!」と言い返した。もちろん名前は恥ずかしがり屋やから、オサムちゃいとった。でもチラッと見えた頬は赤く色づいとって、あぁぁあぁ…!めっちゃかわええ!!


「ほな並べやー!って白石、お前半袖て…!寒ないんか?!」「まぁ、大丈夫ですわ」


「ほーん、さすがテニス部やな」


グランドに着いて先生に集合をかけられた。そのついでにやっぱりっちゅーか、半袖を突っ込まれて、俺って突っ込まれること少ないのになぁ…なんて思ってたら隣の謙也が俺にしか聞こえへんような声で「美しい愛やんなぁ」と言うてきよったで、背中を摘んでやった
そんなことをやっていると先生は次に女子の点呼をとりはじめようとしててんけど、やっぱり突っ込んだ


「んで女子は…名字?!お前何男子のジャージ着てん!」


『やっ、あの…それは…』


やっぱりここは俺の出番やろ。可愛い俺の彼女が困ってんねや、彼氏の俺が助けたらな誰が助けんねん!


「先生、俺です」


『蔵…!』


「んあ?白石…?あぁ!白石が半袖なんは名字に貸しとるからなんか!」


「そういう事ですわ。先生かて、自分の嫁さんが困ってたら助けたりますやろ?」


「せやなぁ」


「それと一緒っちゅー事で、俺の大事な彼女がジャージ忘れてしもたんで俺が貸しとるんです」


きゃーっ!と女子が湧いたんはきっとこのセリフなんやろか?でも間違うたことは言うてへん、全部ほんまのことやもん。しゃーないやんか、なぁ?
顔を引きつらせる先生、キャーキャー言うとる女子、ヒューヒュー茶化す男子、「よう言うわ」と頭を抱える謙也。
そんな皆を余所に俺は、リンゴちゃんと化した名前に微笑んだ
そうすると名前も柔らかく微笑んで、更に優しく手まで振ってくれた。
ああ、なんて愛しい
やっぱり君は俺のマシェリ




No.9、栗子様よりいただきました。




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