name change
約束の星空(跡部)




「おい、いいかげん部屋に戻ろうぜ?」

「いやっ!景吾とお星様見るの!」


あれはいったい、いつ頃だっただろうか。

まだ幼い頃の記憶。


「名前。次にお前に会う時には、満天の星空を見せてやるよ」

「……約束?」

「あぁ、約束だ」


幼いながらも、景吾の言葉なら信じられると、なぜか私には確信があった。

煩いほどの雨音にすらかき消せない、小さな約束。

それがなかなか叶う事はないのだと、この時の私達にわかるはずもなかった。

久しぶり、ね……」


今、私は再び日本の地を踏んでいる。

うだるような暑さが、この湿気を含んだ風が、確かに日本にいる事を感じさせてくれる。


「相変わらずだな、名前」

「……貴方もね、景吾」


昔よりもずっと格好良くなった、素直にそう告げることはできなかった。

長い月日が、私を臆病にさせていたんだと思う。

傍にいれない間、ずっと夜空を眺めながら過ごしてきた私には、あの約束が全てだったから。


「帰ってきて早々だが、ついてきな」


それだけ言うと、さっさと歩き出してしまう景吾の後ろを、私は首をかしげながら慌てて追いかけた。

ヘリポート……?」

「約束しただろうが」


そう言って、ふっと笑った景吾の横顔に高鳴る胸には気づかないフリをして、私は景吾の隣に乗り込んだ。


「名前との約束は破れねぇからな」

「あり、がとう……」


不覚にも溢れ出した涙によって、私は窓の外に瞬く星なんて楽しむ余裕がない。

それでも、自然に重なる唇に込められた想いは、しっかりと感じて……


約束の星空

(それは言葉のいらない)
(ふたりだけの合言葉)




*藤崎春日様よりいただきました。




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