白黒シグナル | ナノ


私は制作途中だった書類をUSBに保存して、会長の後に続いてテニスコートへ足を進めた。
今までテニスコートに来たことなんてないから、平部員や準レギュラー、そしてレギュラー達は物珍しげに私を見ている。
その中で1人、笑みを浮かばせる者がいた。
勿論、夢野美姫である。
魂胆は見え見え、私を嫌われものにしたいんだろう。
だが嫌われることをお望みなら、それは叶わない望みになる。
私が嫌われるとしたら、レギュラーだけなのに。
学校全体で嫌われるはずがない。
私は副会長だぞ、信者までいる人間が、ぽっと出の女に負けるはずがない。
あーあ、ホントにあのキチガイ女はつまらない。
たいした策もないくせに私に楯突くなんて、余程のバカだよ。

「全員集合!新マネージャーを紹介する!」

会長の言葉に、部員が集まってくる。
流石氷帝、部員の数がけた違いだ。
全員集まったようで、会長が私の背を押した。
そういう扱いは止めてくれないかな。
そう内心文句を言いながら、私は声を張り上げた。

「今日からマネージャーになりました、二反田蒼です。知っての通り、生徒会副会長をしています。生徒会との掛け持ちになりますが、精一杯サポートをしていきたいです。よろしくお願いします」
「二反田から3つの条件があるらしい、聞いておけ」
「1つ目は、私は準レギュラーと平部員の専属マネージャーとして、入部しました。レギュラーのサポートは、夢野先輩に任せます。異論は認めません。
2つ目は、部活中に生徒会の書類製作などのため、パソコンを使う事があります。サポートには支障がでないようにしますので、ご了承ください。
3つ目は、レギュラーに対してですが、私に関わらないで下さい。あなた達は夢野先輩がお好きだと思うので、無理して関わらなくて結構です。私はあなた達に近付きたくてマネージャーになったわけではありませんから。もし私に何か言いたいことがあるなら、話は別ですがね。
この3つが守られなかった場合、私は部がどうであろうと即刻退部します。ご協力をお願いします。私からは以上です」

私がそう言い終わると、準レギュラーと平部員から盛大な拍手をいただいた。
そうだよね、夢野先輩はレギュラーにしかサポートしないだろうし。
ミーハー臭がぷんぷんするよ、近づかないでくれよ頼むから。
一方レギュラーは不満顔。
それもそうか、明らかに嫌われてるもんな。
だが私は気にしない。
お前らに好かれるくらいなら、転向してやるよ!
そして一番酷いのはキチガイ女。
すごい形相で私を睨んでる。
実に滑稽、私がお前の手のひらで踊るか、バーカ!
顔には表情を出さずに部員を見渡すと、レギュラーの中から2人、準レギュラーから1人、私に強い視線を送る人を見つけた。
これはプロテスタントと見ていいのか?
これは面白くなりそうだ。
あの女のシナリオは、既に狂い始めてるんだな。
ホントにあのキチガイ女はバカだ。
ハッピーエンドのシナリオに必要な、登場人物の欠落に気付かないなんて。
さあキチガイなお姫様、私とゲームを始めようか。
負ければ、勿論追放だ。
泣くのはどっち? 笑うのはどっち?