白黒シグナル | ナノ


夢野に暴言という名の文句を吐き出した日の放課後、なぜか生徒会室に名だけ会長の跡部先輩が姿を現した。
今さら何のようなのか知らないけど、仕事の邪魔だけはされたくない。
早く出ていってくれないかな、と内心思っていると彼は怒っているのがよくわかる声色で言う。

「オイ、お前美姫に暴言を吐いたらしいな」
「は?何の事です?」
「しらばっくれるな!
今日のHRの時間に暴言を吐いたと美姫に聞いたぞ!
副会長だからって美姫に暴言吐くんじゃねえ!
お前なんか名だけの役職だ、俺様に近付くために立候補したんだろう?」

…私、なんでこんな人の下で働いてたんだっけ。
名だけの役職?
それは跡部先輩のことだろうが。
それなのによく上から言えたものだよね。
会長のやる仕事をここ数ヵ月は私がこなしてきたというのに。
なあ、先輩が最後にここに来たのはいつだったか覚えているか?
私はもう長い間見ていない。
私の記憶に間違いがなかったら、の話だが。
とにかく、一つ言えることがある。

「うるさいんだよ、名だけ会長が
私が名だけの副会長だと?
笑わせてんじゃねえよ!
あんたが最後に生徒会室に来たのはいつだ、言ってみやがれ!
私は数ヵ月ずっと会長がやる仕事をこなしてきた!
知ってるか?
最近じゃああんたが生徒会長である事に不満を漏らす生徒が増えた
前のようにカリスマ性のあるあんたじゃなくなったんだから当たり前だわな?
後期選挙では絶対に落ちるぞ
それから言っておく、私が副会長になったのはな、あんたに色目を使うためじゃない!
生徒会の一員として学校を動かしたかったからだ!
あんたみたいな無能な会長、この部屋に来る資格なんかねえ!」

怒りに任せて手元にあったカップをひっつかみ、中の紅茶を先輩に向けてぶっかけた。
なんで私がそんなことを言われなきゃならないんだろう。
ずっと会長の下で働いて、会長はよくやってくれるなって言ってくれたじゃん。
長い間一緒に学校運営を考えてきた私よりぽっと出のけばい女を信じるのか。
もう会長と呼ぶには相応しくない。
失望しましたよ、先輩。
この学校はキングが支配していたはずなのにいつの間にかそれは操り人形のキングに支配されていたようだ。
あとは堕ちるしか、残ってない。