白黒シグナル | ナノ


委員長と生徒会副会長の両立は難しい。
やることが多すぎていくら時間があっても足りやしない。
だから朝のHRを進めながら来年度の予算案をどうするか考えていると突然教室のドアが開いた。
さっきの出席では遅刻者はいなかったはずだ。
クラスを間違えたのだろうか。
そう思っていると、甘ったるい臭いが鼻をついた。
おそらく香水の臭いだ。
数メートル離れているのに臭うとは相当な量をつけているのだろう。
臭いの元へ目を向けるとそこには一人の少女が立っていた。
まあ、香水つけてるから女子だけどね。
男子がつけてたらいくらなんでも引く。
それは置いておいて、私にはそこにいた女子に見覚えがあった。
確か最近転入してきた夢野美姫という三年だ。
今日の朝休みに生徒会室の机の上にあった書類を見てぶりっこだな、という感想を抱いた記憶がある。
書類と同じ緩いパーマのかかった髪に化粧で固められた顔。
膝上二十センチまで短くされたスカートとルーズソックス。
明らかに風紀委員と生徒会役員をバカにしている。
そしてHRの妨害。
こいつは本当に年上なのだろうか。
とりあえずイラついたので抗議をしてみる。

「今はHR中ですので、用があるなら終わってからにしていただけますか」
「モブがうるさいのよ!
黙りなさいよ、誰に口を利いてるの!?」

いや、お前がな。
初対面の相手にモブ宣言とはいいご身分だ。
とりあえずこいつ死ねばいいのに。
大体年下だからって偉そうな態度をとっていいという決まりはない。
自分が偉いと思ってんのかよ、全くウザいとしか言えない。
私の怒りを知らずか、夢野が口を開く。

「チョタぁ、一緒に喋ろぉ?」
「あ、はい!
すぐに行きますからまっ…」
「お前ら黙れや、私に喧嘩売ってんのか?
なら買ってやるから私の前に立てや」
「だからぁ、黙れって言ってるのが聞こえないのぉ!?」
「黙んのはお前だ、クソ女
お前教育受けてんのか?
お前が世界の中心じゃねえんだよ、ボケが
言っておくがな、私はこのクラスの委員長兼生徒会副会長だ
お前が私をモブだと言うならお前は何だ、校長か?お姫様か?
ざけんじゃねえよ、頭大丈夫か?病院行けや」
「酷い…!」
「二反田さん、なんでそんなこと言うの!?」
「なんで?バカにしてんの?
私に対するモブ宣言と黙れ
私がなんでそんな頭の中がスッカスカなバカ女にバカにされなきゃなんないんだよ、頭にきてんだ今
鳳、お前もお前だ
HR中に堂々と喋りに行こうとしてんじゃねえよ
なんだ、お前いつの間に私のHRないがしろにしていい身分になったんだ?
あ?今すぐ言ってみろや」

怒りに任せて口から言葉を紡げばクラスメートがそうだそうだと騒ぎ出す。
なあ、知ってたか?
このクラス、私の信者多いんだぜ?
だから夢野と鳳は私とクラスメートに“敵”と見なされた訳だ。
夢野が小さく絶対に許さない、と呟いていたが私はあんたに許されたくないから許さなくて結構。
むしろ、あんたが私に許されるべきだ。
まあ謝られたとしても許す気なんてさらさらないんだけどさ。
今日からあんたは私の敵だ、さあ全面戦争を始めようか!