小説 | ナノ



あの日から数ヶ月後。
凛の体は徐々に蝕まれ、彼女の意思では動かなくなってきていた。
前までほぼ起こらなかった吐血は毎日のように起こり、シーツに赤い点を残していく。
体全体へ力が入らなくなり、最近では体を起こすことさえ困難になっていた。
それとは裏腹に窓の外では暖冬だったのか早咲きの桜が満開になっていた。
真っ白な顔の凛に鬼道が心配して声をかける。

「大丈夫、なのか?」
「いや、もう危ないだろうな…」
「なっ…!?」
「数ヶ月でここまで悪化するなんて思わなかった
もう少し、もう少しだけ生きたいんだ…」
「凛……。」
「さびしそうな顔をするな、有人
もし私が死んだとしてもまた会えるさ」
「どういうことだ?」
「人間はな、また廻るんだ
大切だった人のもとに」

そう言って凛は瞳を閉じる。
今にも呼吸が止まってしまうのではないかと疑ってしまうほど彼女は弱々しい印象しかない。
ごほごほ、とせき込みまた血を吐く凛。
その様子を見ていた鬼道が済まないと、わびの言葉を発する。
その言葉に凛はお前がこの病気を運んできたわけではない、生まれつきの問題なのだから気にすることはないさ、と無理にほほ笑む。
つらそうなほほ笑みは自分に気を使わせないように微笑んだのだ、と鬼道は自分の無力さが憎かった。


桜と彼女の反比例