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鬼道が発した言葉に明らかな怒りを顔に浮かべ、凛は叫ぶ。

「済まなかった…、だと…?
ふざけるな!」

鬼道は何を言うでもなくただうつむき黙っている。
体を起こした凛が拳を握りしめ問う。

「何で一年前に謝りに来なかった…!?」
「俺が起こした事でお前に嫌われたくなかった」
「嫌う嫌わないは別として、普通自分が悪ければ謝るのが常識だろう!?
変な気を使われたことに私は怒りを覚えた!」
「すぐに謝らなかったのは悪かった」

頭を下げる鬼道を見て凛は何とも言えない気分になった。
彼が生半可な気持ちで謝っていない事は分かった。
だが、怖かったからというのは謝りに来なくてもいい理由にはならない。
それは逃げたことと変わりはない。
だが彼女を忘れていたわけではないようだ。
鬼道は鬼道なりに責任感を感じていたらしい。
彼の性格上、仕方のない事だがやはりイラついたのは事実である。
凛が鬼道に頭を上げるように言った。
顔を上げるなり鬼道は凛を抱き締めた。
突然の行動に一瞬ポカンとした城崎だったが状況を理解すると鬼道を必死に押し返そうとした。
サッカーで鍛えているとは言え男女の力の差は埋まらず押し返すことは不可能だった。
凛が焦りながら鬼道に問う。

「な、何のつもりだ…!?」
「城崎、俺はお前が好きだ」
「なっ…!?」
「サッカー部に入った時からずっと…」
「…冗談は止めろ」
「冗談なんかではない!」

あまりにも鬼道が真剣な目で訴えかけてくるので凛は返答に困った。
徐々に熱を帯び赤みを増していく頬。
徐々に早くなる鼓動。
体は気持ちに正直だ。
鬼道が問う。

「お前は、どうなんだ…?」
「私は、鬼道が雷門に行ってからもずっと、想い続けていた」「それは、オッケーとして受け取ってもいいのか?」
「それ以外に取り方があるなら教えてもらいたいものだ」

凛が赤い顔のままうつむいて言うと鬼道は小さく微笑んで凛の唇に軽く口付けを落とした。


想いよ届き繋がれ