小説 | ナノ



真っ暗な中で凛を呼ぶ声がする。
試合中に倒れたのだから当然か、とぼんやりした意識で考え、それから気づく。

迷惑をかけている…。

帝国のキャプテンがこんな様じゃ、帝国ももうダメかもしれない。
がっかりした中、凛は思った。
キャプテンが立て続けに変わってしまっては練習にはならないだろう。
無敗の帝国はもうその姿さえない。
口の中に広がる鉄の味と掴まれるように痛む心臓。
それが告げるのはもう彼女に残された生きていられる時間が僅かだということ。
あぁ、もう生きられないのなら、最後に鬼道に言いたかった、好きだ、と…。
そう考えているうちに彼女の意識は途絶えた。

救急車で運ばれるのは今回で二回目だ。
鼻をつく消毒液のにおいで目を覚ました凛は再び考え始める。
それは1年前のことで、左目の傷とほほの傷ができた事件のことを指す。
あのときは、鬼道はここには来なかったなぁと思い、少し腹が立ってくる。
佐久間や源田、その他のメンバーは来ていたのになぜ彼だけが来なかったのだろう。
やっぱり、凛に責められるのが怖かったのだろうか。
それとも、自分の起こしたことを認めたくなかったからなのか。
どちらにせよ、彼女の怒りを刺激したことには変わりない。
小さくため息をついて横に目をやると、そこには鬼道がいた。
私が目を覚ましたことを確認すると、彼は小さな声で言った。

「済まなかった。」



過去とは違う一点