小説 | ナノ


試合開始早々2点を失った雷門。
前の帝国とは比べ物にならない圧倒的なスピードとテクニックを目の当たりにし、彼らの闘志は早くも失せ始めている。
そんな雷門の選手とは対照的に帝国の選手は余裕を見せつけていた。
成神にいたっては悠長に鼻歌まで歌っている。
半田やマックスが呆然と呟く。

「これが今の帝国…?」
「俺たちでも歯が立たないなんて…」
「これ以上の失点は許されない
城崎を集中的にマークしろ!」

鬼道の指示で、キックオフ早々凛の周りにはマックス、半田、宍戸がマークに付いている。
マークされているからか、全く動こうとしない凛に半田が話しかける。

「お前、俺らを振り切るとかしないのかよ」
「なぜお前らを振り切る意味がある?」
「なぜって…」
「帝国は私一人ではない」

凛がうっすらと笑みを浮かべた直後、鬼道がはっと目を見開いた。
そう、帝国のFWは凛だけではないのだ。
ボールを持った佐久間がすいすいと雷門選手を抜いていく。
それは一瞬の風が吹いた様に感じるほど早く、雷門側は全くと言っていいほど対応できない。

「だから、言っただろう?
帝国は私一人ではない、と」

凛が口角をあげて笑う。
それと同時に佐久間がピィィィっと指笛を鳴らした。
地面から紅いペンギンがひょっこりと顔を出して佐久間の足に噛みつく。
鬼道が目を見開くのが凛には分かった。
そうとは知らない佐久間はそのままシュートを打った。

「改・皇帝ペンギン1号!」

佐久間の放ったシュートはペンギンとともにゴールへ突き刺さった。
そのシュートに雷門選手全員を驚かせ、帝国選手は笑みをうかべた。

女戦士と戦士たち