素直になれない |
今日も私は公園に居る。 言い回しからして毎日公園に居るのだけれど、別に暇人ってわけではない。 私は、しっかりとした目標をもって、ここに居る。 それは数日前のことだった。 かなりベタな展開だが、私はナンパにからまれていた。 抵抗はしたが、性別の違いはやはり大きく、人気の少ない路地裏に連れ込まれそうになった。 そこを助けてくれたのが、彼だった。 鳥除けの、風船みたいな頭。全身黒タイツ。腰にはベルト。 頭以外全身真っ黒な彼は、見た目こそふざけていたが、予想以上の身体能力でナンパを倒したのだ。 まるでヒーローのように。 ありがちだけど、私はそんな彼に恋心を抱いた。 以降、私は彼がよく訪れる公園で彼を待ち伏せし、話しかけることが日課になった。 だけど、そこらへんに居る女の子みたいに私は素直になれない。不器用なんだ。 今だってほら、 「名前サン、美味シイパンヲ買ッテ来タノデスガ…」 「っ、い、いらないっ」 話しかけられると、必要以上に緊張して、つい素っ気ない態度をとってしまう。 可愛くない。ありがとうって、受け取りたかったのに…っ それでも彼、平坂黄泉は私の隣に居てくれる。 それが救い、だ。 今までだって、気を使ってくれる彼に素っ気ないことばかり言って、素直になれないんだ。本当はもっと、素直になりたいのに。 そう思うと、勝手に口が動いた。 「黄泉さん。ごめんね、いつも素直になれなくて」 言った後に自分で吃驚した。 彼もそれは同じなようで、少し驚いたように肩をピクリと揺らした。 「私ハ…アナタガドレホド可愛イラシイ方カ分カッテイマスヨ」 「へ、」 「私ニイツモ素ッ気ナイ態度をトッテシマッタ時、少シダケ落チ込ンダヨウニシテイマスカラ。」 ソンナアナタガ、私ハ好キデスヨ。 なんて言われてしまったら、赤くならない子なんていないと思う。 「〜〜〜っっ、わ、私今日は帰りますっっ!?」 たたたっと走って行った彼女に、男は笑みをこぼした。 「彼女ニハ少々早スギマシタカネェ…」 言葉の割りに、男、平坂黄泉は嬉しそうに言うのだった。 何ですか、このかっこよすぎる黄泉さんは…! もうときめきすぎて英語やめました、やってられっか!(実話) ペゴ太様、本当にありがとうございます…! |