未来日記 | ナノ



学校についてからすぐに向かうのは図書室。
三年生の教室に私の席があるらしいけど、私は三年生の教室に行こうとは思わない。
三歳も年の違う人間と、うまくコミュニケーションがとれる気がしないし、とる気もないし。
流石に体育と音楽、それから美術はクラスメイトと受けるけど、あまり楽しいものじゃない。
イレギュラーな存在と授業を受けるのは、あまりいい心地はしないだろう。

「体育、頑張らなきゃ…」

朝、兄さんにあんなことを言ったのは、兄さんに誉めてもらいでもしないとやる気が起きないから。
運動が嫌いなわけではないけど、親の間違った運動能力の使い方を目にしたことがある私には、運動という概念があまり好きになれないもので、どうしても気持ちが後ろ向きになってしまう。
逃げたくなる気持ちを押さえつけて、体操服に着替えた。
図書室は利用者自体が少ないし、朝ならなおさら誰も来ない。
そう認識していたのが、間違いだった。

「なんで生徒が…」
「……」

がらがらと音をたながら立て付けの悪いドアを開けて中に入ってきたのは、逆毛を立てた紫色の髪を二つに結い、ゴスロリのような服を身にまとった同い年くらいの女性。
こんな派手な格好の生徒は桜見中にはいない。
要するに、部外者ということだ。
彼女を視界にとらえた直後、ノイズを奏でるヘッドフォン。
私の未来が、変わった。


【――…嘘だと思いたかった、兄さんともう会えないなんて…。
まだ誉めてもらってないよ、兄さん、こんなの嫌だよ…。
そう思いながら、平坂瑠斗は死を迎えたのだった。

平坂瑠斗、Dead END】


私に、Dead ENDフラグがたった。
そこから考えられるのは、眼前にいるのが日記所有者であるということ。
私の仮定を裏付けるかのように、他の所有者の持つ無差別日記と名付けられた日記が、彼女が9thであることを告げる。
顔は見たことがある。
国際的テロリスト、雨流みねね。
彼女が日記所有者だなんて、予想がつくはずない。
どう考えても、私の方が不利だ。
せめて、彼女の攻撃から逃げられれば…。
そう考えたとき、ヘッドフォンがら今までにはなかったタイプの未来が流れた。


【窓ガラスを割って一階に着地!
尻餅もつかなかったし、爆発からは逃げられたし完璧!】


これは、使えるかもしれない。
爆発という単語から、あまり長く校舎内にいない方がいいだろうと判断して窓へ体を向けた。
その瞬間、後ろから焦ったような声がした。

「お前、ちょっと待ちな…!」

…テロリストの考えることは、よくわからない。
私に関わりたいなんて、よっぽどの物好きだ。

テロリストと孤独少女