未来日記 | ナノ



サバイバルゲームの最中でも、現実は私達に優しくない。
起きて着替えて、朝食を作って食べる。
いつもと変わらない朝。
それが私達のおかれている状況と正反対で、まだ夢の中にいるようだ。

「おはようございます、瑠斗。今日の朝は何ですか?」
「兄さんおはよう。今日は目玉焼きとトーストだよ」
「そうですか、手伝うことはありますか?」
「ううん、もう準備できてるから大丈夫だよ」

私がそう返すと、兄さんは申し訳なさそうにまたそうですか、と言った。
兄さんからすれば、何も手伝わずに朝食にありつくというのは、どうもしっくりこないのだろう。
別に気にしなくてもいいのに、家族なんだから。
目玉焼きをつつきながら思っていると、兄さんが真剣な表情で私の顔へ顔を向けていた。

「瑠斗、今日から登下校私が送り迎えします」
「え、兄さん何言ってるの?私一人で大丈夫だよ?」
「瑠斗が大丈夫だと言っていても、危険がつきまとってるんです!3rdが通り魔であったように、他の所有者が犯罪者である恐れもあるんですから、大丈夫ではないでしょう!?」

兄さんの言うことはごもっともだ。
既に1stが殺ってはいるが、3rdはニュースでも騒がれていた通り魔だった。
まだ通り魔なら、手持ちの文具でなんとかなるが、それ以上の犯罪者なら私は負けるかもしれない。
考えれば兄さんが送り迎えしてくれるのが、一番安全だろう。
幸い昨日の大聖堂のシルエットは変身後の姿だった。
他の所有者は、兄さんが自己申告しないかぎり兄さんが12thだと分からないだろう。
兄さんの提案が一番安全で、確かなのにかわりはない。
それに私としても、兄さんと少しでも長くいられるのだから、一石二鳥だ。
だから私は快くそれを受け入れた。

「じゃあ、兄さん頼むね」
「任せて下さい!正義のヒーローの名にかけて、瑠斗を守りますからね!」

自信満々に言う兄さんに心が温かくなる。
どうやらサバイバルゲーム中の朝は、ほっこりとした気持ちも芽生えさせるようだった。


幸福者二人