聞こえてますか、大好きだよ  



幸村君に、この気持ちが聞こえればいいのに。
内心そう呟きながら、私はため息をついた。
幸村くんは私の気持ちを知らない。
いや、それ以前に私を知らないだろう。
同じクラスではあるものの、彼と私では違いすぎたから。
テニス部で、それに加えてその部長な幸村君と、写真部で目立たない地味な私。
同じクラスでも、私は幸村君の存在感に私は隠されてしまう。
それが嫌だとか、そんなわけじゃない。
ただ、羨ましかっただけ。
周りに人がいて、いつも笑っている幸村君が。
幸村君は覚えていないだろうけど、私は幸村君に一度だけ助けてもらったことがある。
少女漫画のようにベタだけど、先生にクラス全員分のノートを運んでほしいと頼まれ、ノートを運んでいたときの話になる。
前が見えない状態で運んでいたため、前から歩いてきた幸村君にぶつかってしまったのだ。
普通、そんな状況ならぶつかられた人間は怒るだろう。
でも幸村君は違った。
大丈夫?と私の心配をし、それから廊下に散らばったノートの半分以上を抱えて、私のクラスまで運んでくれた。
それは二年生の時の話だから、当然クラスは違った。
それなのに、幸村君は最後まで優しかった。
ぶつかったのは私で、悪いのは全面的に私なのに。
それだけのことだったのに、私は幸村君に惹かれるようになっていた。
同じクラスなのだから、会話が出来ればいいのだけど、私にそんな勇気はない。
だから屋上からカメラ越しに彼を見つめるしか、方法はないのだ。

「幸村君、今日もカッコいいなあ…。部活、頑張ってね」

小さく呟いてから、カメラを構え直す。
一枚ぐらいなら、とっても怒られないよね…?
そう思いながらシャッターをきろうとしたその時、幸村君がこっちへ振り返り、そして私の方に向かって笑いかけた。
私が写真をとろうとしていることがバレたらしい。
それでもシャッターへのせた指に修正はきかず、そのままパシャリと幸村君の笑顔を切り取ってしまった。
一瞬、シャッターの音と共に、この気持ちが伝わればいいのに、と思ったが、そんなことが起きれば完全に私は気持ち悪い人になるわけで。
パニックと恥ずかしさから屋上から走り去った私を見て、幸村君が少し嬉しそうな顔をしていたなんて、その時は全く知らなかった。


シャッター音と心音を込めて



(やっとこっちを見てくれたね、苗字さん)
(長い間待ち続けて良かった)
(ゆ、幸村君…!)


−−−
遅くなってしまい申し訳ありません…!
しかも、これは切甘なのか分からない…
その上、名前変換が皆無で頭を下げるしか出来ません…!
本当にすみません…
書き直しなどございましたら、蒼衣さまのみ承ります!
リクエストありがとうございました!





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