剣城連載 | ナノ



俺の化身シュートが止められた。
それが酷くショックで、俺は少し離れたところに立つ少女を見つめた。

弱者の味方少女


中学一年にしては高い身長と、毛先だけ内側にカールした雪のように白い髪。
肌もそれと同様、透けるように白い。
心なしか細く見える体でよくランスロットのシュートが止められたものだ。
感心していれば、少女が口を開く。

「なぜ彼らを痛め付けるのですか」
「フィフスセクターの命令だからに決まっているだろう」
「…最低です
抵抗も出来ない彼らをさらに痛め付けるなんて貴方は悪魔です」
「勝手に言っとけ」

俺がそう言うと、少女は不愉快そうに歪めていた顔をさらに歪めた。
力あるものが、力のない非力なプレーヤーを支配することの何が最低だと言う?
自然界は弱肉強食だ。
それと同じようにスポーツ界だって弱肉強食なのだ。
弱者は強者の踏み台にしかならない。
それが、この雷門だった話だ。
それなのに最低だとは、全く笑わせてくれる。
俺が小さく笑うと、少女は眉を寄せて言った。

「お引き取りください
ここは貴方達がいていい場所ではありません」
「はっ、減らず口を
お前に俺達へ指図する権限なんてないんだよ」
「ならば、実力で分からせるしかありませんね
私のシュートが決まれば、早く消えてください」

先程俺が蹴ったサッカーボールを地面に置いて、少女は俺を真っ直ぐ見据えた。
雷門を傷付けさせるものか、という強い意志が俺に流れてくる。
どうせ相手は女だ、シュートが決まるはずがない。
それに、実力の差が分かれば大人しく身を引くだろう、と俺はそれを認めた。
それが、数秒後、俺達を驚愕させることになるとはその時、誰も知らなかった。