リレー小説 | ナノ



今日の授業が終わって、放課後へ時計は針を進めた。
クラスメートはぞろぞろと部活へ足を進め、教室を後にする。
いつもならウチだってその中の一人や。
やけど、今日はそう言うわけにいかんかった。
呼び出しの手紙がきとったからや。
ご丁寧に、数学のノートに挟んであって、柳に知られんように、な。
仕方ないから出向いたろう、無視したら後々大変なことになりそうやし。

「柳、ウチちょっと先生に呼び出されてんねん
先に部活行っててもらえん?」
「分かった
だが、結城が呼び出しとは珍しいな」
「提出物忘れとったからその説教やと思うわ」
「なるほどな
精市には俺から言っておこう」
「おおきに、柳」

柳にお礼を言ってから、屋上へ急ぐ。
教室から出ていったウチを見ながら柳がこう呟いたことを、ウチは知らんかった。

「まったく、嘘を吐くのが下手だな…」


ー*
ウチが屋上に着いたときには既に数名の女子がたむろっとった。
多分、ウチを呼び出した女子やろう。
そうでなかったら突き刺さるような日差しの中、わざわざ屋上で話なんかせえへんやろ。
ウチを確認した一人の女子が、おもむろに口を開いた。

「結城さん、分かってるわよね
マネージャー、すぐに止めなさいよ」
「なんでアンタにそう言われんとアカンの?
ウチが何しようがウチの勝手やろ」
「ムカつくわね、テニス部は私達の物なのよっ
あなたが独り占めしていいものじゃないの!」
「ちょっと待ちいや、テニス部を物扱いせんとってや
幸村や柳は物やない、人や
誰の物とか、そんなんないわ」
「屁理屈を言わないで!
本当に分からないみたいね…
大体、あなたムカつくのよ!
テニス部の人としか喋ってないし!
お姫様にでもなったつもりなの!?」

その言葉にウチの中で何かが弾けた。
そんな風に皆を思ったことなんかない。
ただ純粋に彼らをサポートしたいだけやのに。
なんでこんなことばっか言われなアカンの?

「勝手なこと言わんとって!
ウチは皆のサポートがしたかったからマネージャーになったんや!
アンタらの勝手な見方で決めつけんとって!
マネージャーの仕事せんと声援ばっかするアンタらとはちゃうんや!」
「こっちが黙っていれば…!」

ウチの言葉が気にさわったんか、相手が手を振り上げる。
別に女子に叩かれても痛くないし、それで気がすむならそれでええし。
どう対抗するでもなくそれを見ていると、横からにゅっと腕が伸びてきて彼女の手を掴んだ。
突然の事態に双方ともその腕の持ち主を確認するために横を向けば、見慣れた顔があった。
文句を言うために歪められていた女子の顔が、予想外の相手に拍子抜けして間抜けな顔に変わる。
それを気にするでもなくその人物は口を開いた。

「うちのマネージャーに手を出すのはやめてもらえるか」
「や、柳くん…っ」
「柳、何で…」

その人物――柳はウチの腕を引いて歩き出す。
もちろん、女子はほったらかしに決まっとる。
しばらく無言で歩いた後、下駄箱まで来てから立ち止まり、呆れたようにこう言った。

「少しは俺を頼れ
マネージャーとはいえ、俺らの仲間に変わりはないだろう」
「でも、迷惑かけたくないし…
それより、なんで分かったん…?」
「真面目なお前が課題を出し忘れるはずがない
それに、嘘をつくとき必ず俺と目を合わせない」
「え、嘘やろ、そんな癖あらへん!」
「さあな」

柳はどちらともつかない、曖昧な言葉を残してコートへと歩いていく。
それから遅れるわけにいかへんから、ウチも靴を履き替えた後、急いで彼の背を追った。

警戒の赤のち青




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リレー小説七話目は佐久間ルイが担当させていただきました。
長い間止めてしまって申し訳ありません…。
その上無駄に長いという…。
書きたいことを詰め込んだらこんな結果になってしまいました…。
とりあえず呼び出しされるヒロインが書きたかっただけです。
間違いだと思うことはしっかり主張するのが、ヒロインだと思ったので、こんなベビーなお話に…。

この後に繋ぐのは大変だと思いますが、凍音さん、よろしくお願いします。