リレー小説 | ナノ


マネージャーを勤めていると部員ほどやあらへんけど疲労は蓄積するもんや。
家に帰って真っ先に向かうんは風呂場。
ゆっくりと湯船に張られたお湯に浸かるときが至福の時間になりつつある。
とは言うものの、長湯は出来へんから数分浸かればそそくさとあがってしまうんやけど。
風呂からあがって少し粗っぽく髪を拭いていると不意に携帯が着メロを奏でた。
携帯を見るとメールではなく電話のようで、電話なんて珍しいなと思っとったらかけてきた相手も意外やった。
珍しい事もあるもんやな、と電話に出てみれば相手は遅い、と文句を漏らす。
驚いたから凝視しとったんよ、と答えれば電話口の向こうで少し気弱な声が聞こえた。

『お前さんは俺に絡もうとせんけえ、嫌われとるかと思っての』
「絡もうとって、十分絡んどるやろ
弁当作るんは絡んどるに入らんのか」
『違うんじゃ、そうじゃない
俺の言いたい絡みっちゅうのは部活中に喋ったりの事じゃ』
「なるほど、それはないなあ」
『じゃろ?
じゃけえ、不安になったんじゃ』
「仁王が?」

驚いた声を上げれば相手――仁王は悪いか、と不貞腐れたように言葉を漏らす。
そうやあらへんけど、そう答えれば仁王は不満そうではあったが納得してくれた。
驚いたのは事実で、仕方ないと思う。
まさか、コート上の詐欺師がウチなんぞで不安になるなんて。
理由を聞いてみると彼はこう答えた。

『今の部活はお前さんがいてこそスムーズに流れとる
じゃけえ、感謝しとるし、嫌われたくのうて』
「ウチが仁王を嫌う?
あるわけないやろ、ウチは努力する人が好きやねんから
仁王は努力しとるやろ、違うか?」
『…結城には敵わんなり』

仁王はそう呟いてプツンと電話を切ってしまった。
結局何がやりたかったのか謎のまま。
だけど、仕方ないんかも。
最低限全員に関わらんようにしとるし、仁王には冷たいし。
柳はクラスメートやし例外にするが、ウチはあっさりしすぎてるんかもしれん。
それが結果的に不安に繋がったんやとすれば、それはウチのせいや。
もうちょい愛想よくするか、と自分に言い聞かせるように口に出して小さく笑った。
案外詐欺師も可愛いところがあるかもしれんなあ、なんて思いながらウチは鞄にジャージを突っ込んだ。

闇を溶かした銀



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第五話は佐久間ルイが担当させていただきました。
仁王がちょっとヘタレというかなんというか。
彼は認めた人には嫌われたくないからこんな電話するんじゃないかな、という勝手な偏見からこんな話になりました。
今、夢主がいてこその部活なので嫌われてたらどうしようって考えちゃったんです。
完全に偽物仁王。
カッコいい仁王にしようと思ったのに、日常を愛するから臆病の仁王になりました。
相も変わらず意味の分からない文章で、説明しないとわかってもらえない設定。
文才ほしいです…。

凍音さん、続きをお願いします!