リレー小説 | ナノ


「午前中は雨やったなんて、嘘みたいな空やな。」

つい数時間前までは雨が降っていたというのに、今では雲ひとつないほどに晴れ上がった空を見て、瑞季は呟いた。

「まあ、このじめじめした感じはやっぱり雨上がりなんやなあって感じやけど。」

「結城は湿度が高いのは苦手だったな。」

隣を歩く柳は、微笑みながら言葉を零す。

「湿度高いの好きな人間なんて、おるもんなら見てみたいわ。」

溜め息混じりにそう言うと、瑞季は手の甲で額に滲んだ汗を拭った。

「少し休むか?」

少し前から疲れを滲ませていた瑞季を気遣い、柳はそう声をかけた。

「あー…いやいや、マネージャーが休むわけにはな。」

「無理はするなよ。」

「大丈夫、大丈夫。柳もこうやって手伝ってくれてるわけやし、ちょっと暑いくらいで弱音吐いたらバチが当たるわ。」

気遣わせまいとしているのか、おどけたように瑞季は言う。

「そうだな。」

瑞季の意図することに気づいている柳は、それ以上は何も言おうとしない。

「しっかし、本当にこのじめじめは勘弁してほしいわ。」

「雨上がりなんだ。仕方のないことだろう。」

「そらそうや。部員の士気に、というか、体調に悪い影響が出えへんかったらええんやけど。こう蒸し暑いと、嫌になるわ。」

心なしか、両手に持っている、スポーツドリンクやタオルを入れたかごが重く感じる。

「それは大丈夫だろう。」

小さく笑ってから、柳は言った。

「何で?」

「普段からこれだけ部員のことを考えてくれているマネージャーがいるんだ。これくらいの暑さに負けては、それこそバチが当たるというものだ。」

瑞季は目をぱちくりとさせる。それから顔を綻ばせ、くすりと小さな笑い声をあげた。

「そんなに高く評価されるほどのことでもないやろ。マネージャーなんやから部員のこと考えるんは当たり前や。」

「そうか。」

「そうそう。」

瑞季は口元を緩めた。疲れがすっと取れたような気がする。部室から運んでいた荷物も、先程より気にならない。

「空が赤らんできたな。」

柳の声に反応して、空を見上げると、日が随分傾いている。

「夏は日が沈むのが遅いのに、もうそんな時間なんや。」

熱心に練習している部員たちをサポートしていると、時間が経つのも忘れてしまう。

「テニスコート見えてきたで。」

テニスをしている部員たちを、眩しいと思う。日の光も相まって、より一層輝いて見える。瑞季はその目映さに目を細め、テニスコートへと一歩を踏み出した。

朱色に染まる



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リレー小説四話目は凍音が担当させていただきました。
長い間止めてしまい申し訳ありません。そのくせに相変わらずの残念クオリティーで更に申し訳ないです。タイトルにも本文にもセンスが感じられなくて辛い。

ルイさん、続きお願いします!