リレー小説 | ナノ



四限目の授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響き、ありがとうございましたという号令がかかる。
その直後、生徒たちはガタガタと席を移動させたりして食事へと取りかかろうとしていた。
教科書を机の中に押し込んだ瑞季に柳が声をかける。

「一緒に食べても構わないか?」
「ええよ、別にウチは気にしいへんし」

鞄の中から可愛らしい色の弁当を出す瑞季。
パカッと開かれた蓋の下には目にも舌にも嬉しいお手製のおかずがその存在を主張するかのように輝いている。
いただきます、と手をあわせる彼女に柳が感嘆の声を漏らした。

「いつみても完璧な栄養バランスだな…」
「ちょっと野菜を多くしてるだけやで?
後は家庭科の応用だけやし」
「…その応用がひとなみはずれているんだ、結城は」

そう言って柳は自分の弁当を口に運ぶ。
美しい動作についつい目がいってしまう。
流れるような動作に見とれていた瑞季はクラスの女子が発する黄色い声の原因に気付くのが遅れてしまった。
どん、と後ろから体当たりのように抱きついてきた正体にまたか、とうんざりした様子で瑞季はため息をついた。
心なしか、一瞬のうちに顔がやつれたようにも見える。
そしてそれがダイレクトに伝わるような声色で言葉を紡ぐ。

「丸井…、毎回毎回鬱陶しいで」
「いいだろぃ?
お前の弁当うまいんだからよ」
「…美味しいからって人の食事の邪魔せんといてもらえる?
後ろで笑っとる仁王もやで」
「気付いとったんか」
「当たり前やろ
弁当は鞄の中に入っとるからさっさととりぃや」

瑞季の言葉に丸井が即座に鞄へ手を伸ばす。
鞄から仁王の分も合わせた二人分の弁当を取り出すと近くにあった椅子を持ってきて食べ始めた。
本当に美味しそうに食べる丸井を見て瑞季が嬉しそうに笑みを浮かべる。
仁王は無言で咀嚼を繰り返しているが不味いわけではなく、美味しいからこそ無言になっているのだ。
豚肉とキノコのかき揚げに箸を伸ばしたとき、横からひょいと奪われ、顔をあげれば美味しそうに咀嚼している丸井が目に入った。
文句の一つでも言ってやろうと口を開いたがそれより先に黄色い声が上がり、その気力さえ失せた。
黙って食事に集中しだした瑞季のおかずへ懲りずに箸を伸ばす丸井が柳に小言を言われるのはその三分後の出来事である。

食欲は黄にまみれる




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リレー小説三話目は佐久間ルイが担当させていただきました。
お弁当でわいわいしてるのを書きたかったのに見事残念なことに。
ありがちな屋上で全員集合、よりクラスで柳や乱入してきたブン太達とわいわい食べてる方が個人的に好きなのでこういった話にしました。

凍音さん、続きお願いします!