リレー小説 | ナノ



テニスコートのベンチで一人の少女がストップウォッチとバインダーを手に立っていた。
ジャージを身に纏い、テニスコートの向こう側から走ってくる選手のタイムを記録している。
彼女の横を一番に走り抜けたのは副部長である真田だった。

「お疲れ様、真田
タオルとドリンクそこにあるから自分で取ってもらえんかな?」
「うむ、いつもすまないな」
「気にせんでええよー
ウチマネージャーやねんから」

そう言う間にも他の部員達が戻ってくる。
その度に彼女――結城瑞季はバインダーへと記録を書き込んでいく。
その仕事にも慣れたもので、的確な記録表がすぐ出来上がった。
バインダーをベンチに置いて瑞季はタオルとドリンクを部員達に配り始める。

「仁王、ちょっと手を抜いたやろ
前の記録より二秒おそなってんで」
「瑞季にはお見通しか、次からは真面目に走るけえ」
「本当なんかなー
仁王に引き換え赤也は前より伸びてるからこの調子で頑張るんやで!」
「はい、瑞季先輩!」

元気よく頷いた彼に瑞季は嬉しそうに笑った。
そしてベンチでにこやかな笑みを浮かべるテニス部の部長・幸村にバインダーを差し出す。
それを受け取り目を通してからこう紡ぐ。

「全体的にタイムが上がってきたね
次は上半身のトレーニングが必要になるかな」
「分かったわ、ならメニューに組み込んどくわ
出来たら一回幸村に見せに行くから修正は頼むで?」
「分かってるよ
結城が仕事をすぐこなしてくれるから俺は大助かりだ
いつもありがとう、結城」
「そんなお礼言われることちゃうしさ
ウチ洗濯してくるなー」

そう言い残して瑞季は洗濯機の方へ足を進めていく。
幸村はその背を見送りながら部内を見渡して笑みを漏らした。
瑞季がマネージャーになる前は笑いなどなく、ただ淡々とメニューをこなしているだけだった部員が瑞季がマネージャーになり弱点や記録の伸びを伝えてもらうと楽しそうに部活をするようになっている。
それだけでチーム内の士気が上がった気もする。
鼻歌混じりに洗濯をしている瑞季を視界にいれつつも幸村は指示を飛ばした。

「休憩終了!
各自苦手克服にかかるように!」

その指示に部員全員がはい、と返事を返し練習にとりかかる。
パコン、パコンと心地よい音が響くコート内で幸村はまた笑った。


青色絵の具をパレットに



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リレー小説一話目は佐久間ルイが担当させていただきました。
独断で二年生の初夏から夏位から書いてます。
故に幸村元気です。
初っぱなから残念クオリティが滲み出る文章で凍音さんに申し訳ない…。
柳と話してないしもう残念すぎる…。
このあとは凍音さんの素晴らしい話が待ってます。

凍音さん、続きよろしくお願いします!