リレー小説 | ナノ


長い時間が経ったため、温くなってしまった湯に浸かりながら、ため息をついた。もう何度目かわからないものだ。

頭の中を占めるのは、今日の放課後のこと。呼び出されたことは、上手く隠し通すつもりだった。余計な心配をかけたくはなかった。それなのに、いとも簡単に、柳に嘘を見破られてしまった。

柳はマネージャーも仲間だと言った。もっと自分を頼れとも。それは、有り難いことではある。勝利に向けて努力する彼らを、誰よりも近くでマネージャーとしてサポートしてきたのだ。仲間だと言われて、心底嬉しかった。

だからこそ、自分がマネージャーであることが原因で起こったことを、そう簡単に彼らに知られるわけにはいかない。今日の部活での様子を見るに、おそらく、柳から話すことはないだろう。柳はこちらの意思を尊重してくれる。

仲間思いの彼らのことだ。今回のことを話したら、どうなるのかは目に見えている。テニスに打ち込む彼らの力になりたくて、支えになりたくて、マネージャーをしている。それは決して、足手まといになるためではないのだ。

ぐるぐる、ぐるぐると、頭の中を様々な考えが巡る。どうすることが最善なのか。彼らにとって、良い結果になるには、自分はどうすべきなのか。

「とりあえず、風呂出るか。」

このまま浴槽に浸かっていては、体を冷やしてしまう。体調を崩しては、それこそ彼らのサポートに支障を来す。考え事をするのは、風呂を出てからでも遅くはないだろう。

浴室を出ると、脱衣所に置いていた携帯がちょうど鳴り始めた。急いで手を拭いて電話に出る。聞こえてきたのは、随分と聞き慣れた声だった。

「もしもし、柳?」

普段はなかなか電話をかけてこない柳からの電話だ。用件は、今日の放課後のことで間違いないだろう。何を言われるのだろうかと、少しばかり緊張する。だが、そんな必要はなかった。

「柳には本当、敵わんなあ。」

告げられた言葉に、胸がすっと軽くなったような心地がする。いつだったか柳に言われたように、自分だけで解決しようと躍起になっていたのかもしれない。

「ありがとう。ああ、また明日な。お休み。」

頭の中を占めていた悩みは、今ではもうどこにもない。

乳白色に沈む



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リレー小説八話目は凍音が担当させていただきました。
いつも長い間を開けてしまい、大変申し訳ありません。衝撃的なシーンからどうすればよいだろうかと、自分なりに考えてみました。彼女は責任感がとても強い人だと思うのです。

ルイさん、続きお願いします!