五万打 | ナノ



昼休み、俺は図書室でオカルト関係の本を読んでいた。
読書に勤しむ生徒は少なく、ただ静かな空気が流れるだけ。
そんなここが好きで、昼休みになると喧騒から逃げるようにしてここにいる気がする。
ちゃんと昼食をとってからだが。
学園内で心休まる場所はここ以外にない。
だからなのかもしれない。
俺は知らず知らずのうちに眠りに落ちたらしいのだ。
昨日の練習の疲れが体に残っていたからかもしれない。
しっかり休んだはずなのにまだ疲れが残っていたとは。
今日は昨日以上にゆっくり休もう。
睡魔に負けた頭の隅でそう考えた。

―*

どれほど時間がたったのか分からないが、体を揺すられて覚醒へ意識が引っ張られた。
まだ重い瞼を開き体を起こすと俺の背から何かが滑り落ちるような感覚がした。
振り向いて床を見れば、そこには自分のものではない女子ものの上着。
それを拾おうと体を屈めると横にいた誰かが先に上着を拾い上げ、俺の手は空を掴むだけ。
体を起こして俺を揺すったであろう人物を見ると、それは長い髪が印象的な同学年の女子だった。
ファンクラブの連中かと思ったが、違うらしい。
俺に困ったような笑いを浮かべながら口を開く。

「風邪、引くよ
昼休みあと五分だから出てくれると助かるんだけど
鍵が閉められないし、授業遅れるよ?」
「ああ…、悪い…」

席を立つと彼女は開けていた窓を閉めるためか奥へと歩みを進めていった。
盗み見た名札には柏木千鶴と、鳳のクラスが小さく書いてあり、さっきの女子が鳳の話によく出てくる媚を売らない図書委員なんだと気付く。
やっぱり居心地のいい場所には居心地のいい奴がいるようだ。
柏木の背にアイツの面影を重ねて俺は苦笑しながら図書室を後にした。


それが無意識の出会い



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日吉連載の番外編ということで書かせていただきました!
甘いのか分かりませんが最大限の努力はしました…!
連載の時間軸より少し前の話にしてみました
実は知らない間に二人は会っていたんです(知らねえよ←)
ヒロインは日吉に上着かけたりしたことは全く覚えていません笑

仕事が遅くなってしまってすいません…
書き直しなど御座いましたら何なりとお申し付け下さいませ!
みくさん限定で書き直し、持ち帰りを承ります!
リクエストありがとうございました
これからも私共々午前零時の沈黙をよろしくお願いいたします!