この夜が終わろうとも | ナノ



無機質な印象を与える廊下を歩いていると、一人の少女と出会った。
彼女と出会ったのはただ単なる偶然なのか、はたまた必然だったのか。
それを考えてみても、俺はその答えを出せない。
正直なところ、どちらでも構いやしないのだから。

「幸村くん、だよね?」
「うん、そうだよ
一年で俺ってそんなに外見変わったかな?」
「ううん、そうじゃなくて、こんなところで会うなんて思わなかったから」
「それは俺も同じだよ
帝野さんこそなんでここに?」

俺の問いに苦笑しながら彼女もとい帝野さんはまた体調崩しちゃって入院なの、と答えた。
何の変鉄もない言葉のはずなのに自販機で飲み物を買うために持ってきていた財布がするりと滑り落ち、床で小さな音をたてた。

帝野さんが、入院。

その事事態はなんら珍しいことではない。
月交代で学校に来るのと休むのを繰り返していた彼女だから今更驚くことではないはずだ。
なのに、その時なぜか俺には不吉な胸騒ぎがしたのだ。
落ちた財布を拾い上げ、数回ほこりをはらってから俺に差し出す帝野さん。
その差し出された右腕の先には点滴台があって、真っ白な腕の内側に銀色の針がさされていた。
俺と何も変わらない、至って普通の光景。
それなのに俺には安堵より不安が広がった。

「幸村くんも自販機行くの?
奇遇だね、私もなんだよ」
「じゃあ一緒に行こうか
何か一本おごってあげるよ」
「そんな、気にしないでよ
私だって財布持ってきてるし」

そう言って淡いピンクの財布を羽織っていたカーディガンから覗かせる。
そんなに遠慮しなくてもいいのに。
頭の中で考えながら帝野さんと自販機に向かって足を進めた。
その頃にはさっき感じた胸騒ぎの事なんてきれいさっぱり頭の中から消えていた。

胸騒ぎが耳打ち


(きっと俺の気のせい)