ブレイブストーリー | ナノ



はっと我に返って家に飛び込めば、お母さんはいつもと同じようにリビングにいた。
机の上には大きめの紙とボールペン。
私が部屋に入ったと同時に裏返したけれど、その紙にははっきりと離婚届という三文字が印刷されていた。
離婚、なんて認めたくない。

「お母さん、お父さんが家を出ていっちゃうよ!?
止めなくていいの!?」
「大袈裟ね、出張なんか何回もあったでしょ?」
「お母さんのバカ!
私、もう中学生だよ!?
離婚話が持ち上がったことぐらい分かるんだからっ」

私が半分自棄になって怒鳴ればお母さんの顔が一瞬強張った。
離婚話を隠そうとしているみたいだが、何かに悩んだような表情と離婚届があれば小学生にでも分かる。
それなのにまだ隠し通そうとするお母さんには呆れた、の三文字しかかける言葉がない。
これ以上お母さんと話をしても無駄だと感じて家を飛び出した。
階段を降り、近くをがむしゃらに走りお父さんを探した。
でも、お父さんは見つからなかった。
いたのはお父さんにそっくりな別人だけ。
もう、前みたいに三人では暮らせないのだろうか。
がっかりしながらあてもなく歩いていたら、いつの間にか幽霊ビルについていた。
幽霊ビルを見て思い出したのは日吉とあの扉。
もしかしたらまたあの扉があるかもしれない。
そう思って幽霊ビルの階段を上れば、そこで私を待ち構えていたのは悪い意味で予想を越えたものだった。
縛られている日吉と、彼に暴行を加える氷帝の恥さらし三人組。
こんなことするなんてなんてあの人達は低脳なんだろう。
失望しか感じることが出来なかった。


失望の追復曲



追復曲でカノンと読みます