ブレイブストーリー | ナノ



あの後愛海が駆け寄ってきて、おかしなところがないから帰ろう、と言うのをぼんやり聞きながら私の意識は日吉に向いていた。
少し目を離した隙に扉は消えていて、幻覚だったのだろうかと首を捻った。
蒸し暑い日だったから、軽い熱中症にかかったのかもしれない。
納得がいくように半ば無理矢理理由をつけて私達は幽霊ビルを後にした。

―*
翌日、愛海と共に学校へ向かう。
私達専用近道を通って学校へ向かう。
教室に荷物を置いて耳を澄ませればやっぱりテニス部に女子が群がっている様だ。
うるさいことこの上ない。
ため息をつきながら隣のクラスを覗けば、女子軍団の中心にいたのは意外にも日吉だった。
あの日吉が中心、と驚いていると日吉が顔を上げた。
本か何かを読んでいたのだろう。
そこまでは良かったのだが、彼の目と私の目があってしまったのだ。
昨日の事を聞こうと隣のクラスに足を運んだがいざとなると上手く聞けそうにない。
どうしよう、と考えていたら後ろから押された。
急に押されたため、私はなすすべもなく教室の床に倒れ伏すしか出来なかった。
倒れ伏した後、顔を後ろに向ければ、そこにいたのは氷帝の恥さらしと言われる某野先輩がいた。
彼は暴力的で定評がある。
彼の目的はどうやら日吉らしい。
すかずかと教室に踏み込み、日吉に物申す。

「お前か?俺達のビルに入ったのは
あそこは俺達幽霊探検団しか立ち入ることは許されないんだぞ」
「団体じゃないと調査も出来ないんですか」
「貴様…!」

日吉の言葉にカッときた某野先輩が日吉の机を蹴り飛ばした。
床に教科書が散らばる。
ドヤ顔な某野先輩にドアの辺りからやっちまえ、と子分の二人が囃し立てる。
お前ら黙れよ、人間のゴミめ。
流石に口には出さず心の中で呟けば、いきなり某野先輩な悲鳴を上げた。
何事かと思えば日吉が某野先輩の腕を掴んで関節的に痛みが発生する方向へ捻っていた。
ドン、と背を押してクラスから追い出すと床に散らばった教科書を拾い出す日吉。
先輩は悔しそうに顔を歪めながら去っていった。
日吉はすごい。
女子が騒ぐのも分かるかもしれない。
元通りに戻した席に座って本を読み始めた日吉を見つめながらそう思った。


理不尽先輩と彼



今までの話、名前変換なくて申し訳ない。