ブレイブストーリー | ナノ




日吉と会ったのは幽霊ビルだった。
同じ学校、同じ学年なのだが私は彼を知らなかった。
いや、知らなかったと言うよりは関わりたくなくて避けていた、が正しいのかもしれない。
日吉と仲良くしていたらファンクラブの人達に何をされるか分かったものではないからだ。
面倒事に巻き込まれたくなかった私だが、あの日は違った。
親友である愛海が幽霊ビルを探検しよう、と言って私を強制的に引っ張っていったからだ。
何度も嫌だ、と駄々をこねたが無駄で、あっという間に幽霊ビルへ到着してしまった。
一人づつ分かれて幽霊ビルを調査し始めた時、私の足に何かが転がってきたのだ。
何かと思えばそれは内側から光を放つ珠だった。
宝玉、と言えばいいのだろうか。
大きさは丁度右手で持てるぐらいで、拾い上げ見ていると突然声がした。

「美憂、なのか…?」

声の主は私から少し離れた所に立っていたようで、声は近くから聞こえた。
そちらを振り向けば月にかかった影で顔は見えないが、氷帝の制服に身を包んだ男子が立っている。
物好きもいるもんだな、と考えていたら風が吹き雲が晴れた。
月光に照らされた人物の顔は、隣のクラスの日吉だった。
私の顔を見るなり綻んでいた顔に落胆の表情が浮かんだ。
…私で悪かったね。

「…まだ、三つだからな
美憂がいるはずもない、か」
「…何ブツブツ言ってるの」
「それは俺のだから返してもらう」

日吉が歩み寄ったとき、私の手にあった宝玉は消えていた。
日吉はそのまま屋上へ歩き去っていく。
慌てて彼の後を追うと、そこには天へ伸びる階段があり、その先に大きな扉が浮かんでいた。
屋上へついた途端に鈍い音と共に閉じた扉。
あの中に日吉が入ったのだと思うと、彼は何をしたいのだろう、となけなしの思考力が働き始める。
そして、どこへ行ったのだろうとも。
様々な疑問が浮かんだが、その問いに答える張本人はここにいない。


扉の光と君と