わがまま(土沖)

「〜、以上で1280円になります」
「おっ…と…。すまねぇ、ちっとばかし額がでかくなっちまうが構わねぇか?」
「はい!!では一万円からお預かりしますね!!」
「あぁ、頼む。」
「か、畏まりました//」

***
「…で、なんでお前はふてくされてんだ?」
「別に。ふてくされてなんかないですよ」

そういう沖田の顔は明らかに不機嫌で。

土方は頭を悩ませる。

つい先ほど、2人で仲睦まじく会話をしながら、このファーストフード店に入ったばかり。

この短期間で沖田の心境にどんな変化があったというのか…

「はぁ…総司。生憎俺には、お前を不機嫌にさせちまった理由が思い浮かばねぇ。」

土方は沖田を正面から見据え、諭すように語りかける。

「何かしちまったんなら謝るが…何がそんなに気に食わなかったんだ?」

いつもは言い合いになるはずの土方からの尋ね口調に、沖田はゆっくりと顔を上げる。

その顔はどこか赤らんでおり、翡翠は少し揺らいでいた。

「土方さんが…」

今まで堅く閉ざされていた口が開く。

「土方さんが、他の子に笑いかけるからいけないんです…」

弱々しい口調で紡がれる可愛らしい嫉妬。

「…は?」

土方はその台詞の意味を理解できずにいた。


「…俺がいつ、他の奴に笑いかけたってんだ?」

「〜さっき!!レジの子に!!笑いかけたじゃないですか!!」

思わず沖田が声を大にする。

「ちょ、落ち着け、総司」

沖田ははっとして俯く。

「えっと…つまりあれか?あの、金を渡すとき…の話か?」

土方が尋ねると、沖田はコクンと頷いた。

その瞬間、土方は、沖田がレジの女の子に嫉妬していたのだと気づく。


「…くっ!!//」
「な//なんで笑うんですか!!//」

沖田はバッと顔を上げる。

その顔は耳まで真っ赤だった。

「…い、いやっ、お前がそんなことで嫉妬するなんて思わなかったから…つい…な…、クク…」
「〜もう!!//笑わないでくださいよ!!馬鹿!!」

沖田はごまかすように飲み物を口へ運ぶ。

憎まれ口をたたかれても、土方は笑いが止まらなくて。

そんな姿をみて、沖田はぼそりと呟いた。


「…あなたは格好いいんですから…もっと…気をつけてください…//」

そっぽを向きながら、沖田は言葉を繋げる。

「僕以外に、あんまり…笑いかけないでください…//」

土方はあまりに可愛らしい恋人の我が儘に頬を緩ませた。

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