図書室(沖→←斎)
キーンコーンカーンコーン…
授業が終わった。
僕は手早く鞄に荷物をまとめ、ある場所へ向かう。
そこは、斎藤君との待ち合わせ場所。
…図書室。
(今日はまだ来てないみたい。)
斎藤君と僕は、いつもここで二人で勉強してる。
…といっても、斎藤君が勉強してるのを僕が勝手に見てるだけだけど。
ただの僕の片思い。
僕は滅多に図書室なんて来たことなかった。
その日も、たまたま授業で使った古典の資料を返してこいっていう、下手な俳句書きの誰かさんのお使いで来ただけだった。
何気なく横を見てみると、誰もいない図書室の片隅で、あの子は一人で座って勉強してたんだ。
名前は知っていた。
風紀委員の斎藤一君。
いっつも朝、校門に立って生徒指導をしている子だ。
まあ、僕もいっつも朝はお世話になってたし、向こうも僕の名前は生徒手帳で憶えててくれてたみたいだった。
「えらいね、斎藤君。いっつもここで勉強してるの?」
「…沖…田?」
斎藤君、最初は僕がいることに驚いてたけど、そのあとフッと笑いかけてくれたんだ。
「あぁ。放課後は大抵ここにいるんだ。」
いつも、校門では仏頂面な君の、初めて見る笑顔。
この瞬間に、僕は君を好きになってしまった。
男が男を好きになるなんて可笑しいと思うし、君もきっと気持ち悪く思うだろうから…
僕はこの気持ちは伝えない。
今、こうやって毎日放課後に君と二人で居れるだけで幸せだから。
いつもの斎藤君の特等席に腰を掛ける。
机に顔を突っ伏すと、なんだか心地よくなってきて…
僕は静かに目を閉じた。
***
なんだか、気持ちいいなぁ…
ふふ…でもちょっとくすぐったいかも…
髪を優しく撫でられている気がして、そっと目を開ける。
すると目の前には…
「「!!」」
斎藤君の顔があった。
「す、すまぬ!!その…あまりにも気持ち良さそうだったから…//」
慌てて僕から離れる斎藤君の顔は真っ赤で…
きっと今、僕も…
「だ、大丈夫だよ!!きょ、今日は遅かったんだね!!」
声が震えないように、気持ちがばれてしまわないように
必死で平然を装う。
「あ、あぁ。委員会があってな…」
「ふーん…」
…話が、続かない。
ちらりと斎藤君を見ると、彼も少し伏し目がちだった。
その目の下には少し隈ができていて…
ん?
「斎藤君、目の下に隈ができてるよ?昨日夜更かしでもした?」
「!!これは…!!」
僕の指摘に慌てる斎藤君。
訳がわからずに首を傾げた。
そしてしばらくして、彼はキッと僕を見遣る。
「ど、どしたの?急に…」
「沖田」
真っ直ぐな瞳で見つめられ、名前を呼ばれては、僕の心臓も高鳴ってしまう。
「俺は…お前が好きだ。」
え…
「き、気持ち悪いのは…重々承知している。」
思考が停止してしまっている頭に、震える斎藤君の声が聞こえる。
「だが…お前のことを考えると…夜も眠れなくなって…」
斎藤君が僕を…
「このままでは…俺は駄目になってしまう気が…したのだ…」
好きでいてくれたの…?
「斎藤く…」
「…ではな…沖田。今まで、ありがとう…」
「え!!?ちょ…待って!!」
そう言って走り去ろうとする彼の腕を掴む。
そして自分の腕の中へと引きこんだ。
「!!沖田!?//」
腕の中の彼はひどく驚いていた。
さらに腕に力を込める。
「斎藤君…なんで、ありがとうなの?」
僕はできるだけ優しく、彼に囁いた。
「だ、だって…、沖田…俺が気持ち悪くないのか…?俺は男で…男のお前に恋を…」
「僕も、君が好きなのに」
斎藤君の目を見て、きっぱりと伝える。
彼の頬はみるみるうちに朱に染まり、見開かれた蒼青の瞳には涙が溜まっていった。
「おき…た…。それは…本当か…?」
斎藤君が僕の制服を掴み、上目使いに尋ねてくる。
「こんなこと、嘘で言えるわけないよ…」
手触りの良い彼の髪を撫でながら答える。
その瞬間に、彼の目から涙が流れた。
彼のような、きれいなきれいな涙。
僕はそれを拭い、彼の目元にキスを落とす。
斎藤君は擽ったそうにほほ笑むと、僕へと向き直る。
どちらともなく口付ける。
誰もいない図書室は、これからもずっと、僕らの秘密の場所。
===
いやぁ。カユイ←
自分で書いといて…初々しいぞ二人とも(*^//^*)ww
やっぱり沖斎は好きです!!もう二人でいつまでも幸せだったらいい!!
お付き合いくださってありがとうございました!!
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