蜂蜜と飴細工 柚魅さまより(相互記念)<原沖>
高く昇った太陽が照り付ける午後。
僕は待ち合わせの場所で恋人を待つ。
約束の時間まであと数分となったところで、見慣れた車が直ぐ傍に停まった。
運転席を覗き込めば、ふわりと微笑む左之さんの姿。
僕は小走りで車に駆け寄ると、その助手席へと乗り込んだ。
*****
「うわっ眩し…っ」
西の方向へと走り出した車内に容赦なく西陽が射し込む。
思わず目を瞑った僕に左之さんはくすりと小さく笑うと、運転席から腕を伸ばして助手席に設けられたサンバイザーを引き下ろした。
「ありがと、左之さん」
陽射しが遮られて、目を開けた僕は左之さんにお礼を言う。
それに笑顔で応えた左之さんは、赤信号で停車するとダッシュボードを開けて何かを取り出した。
「さすがに眩しくて運転し辛いな」
そう言った左之さんは取り出したサングラスを掛けた。
漆黒のレンズで目元を覆われた左之さんは、なんだか何時もと違う雰囲気を醸し出していて。
僕は思わず見慣れないその姿に見入ってしまった。
「どうした?総司」
じっと左之さんを見詰めていた僕に気付いた左之さんが問い掛けてくる。
「あっ、ううん。何でも無い、です…」
慌ててふるふると首を振る僕に、左之さんはちらりと視線を寄越してくすりと笑みを零した。
「俺に見惚れてるのは構わねぇけど、せっかくのドライブなんだから少しは景色も見てやれよ」
「う…うん…」
左之さんの言葉に僕はフロントガラスの向こうへと顔を向ける。
でもやっぱり隣の左之さんが気になって、僕はこっそりと横目で運転席を見た。
「…っ!」
交わる視線。
信号待ちしていた左之さんは、ハンドルを握ったまま僕の方へ顔を向けていたのだ。
「そんなに見惚れるほどイイ男か、俺って」
にぃっと口角を引き上げて言う左之さんに、僕は頬に熱が集まるのを感じてふいっと顔を背けた。
「みっ見惚れてたワケじゃないけど…っ!」
なんだか恥ずかしくなった僕は慌てて否定の言葉を発したけど。
でも、サングラスを掛けただけで何時もと違って見える左之さんが気になるのは事実で。
僕はゆっくりと運転席に視線を戻すと、おずおずと口を開いた。
「…それ、すごく似合ってて格好良いなぁ、って…」
「あぁ、コレか。ありがとな」
そう言った左之さんの瞳が黒い硝子の向こうで細められたのが解った。
「…なんか、何時もと雰囲気違って左之さんじゃないみたい」
「そうか?……じゃあ…」
「え?」
気付くと僕の視界一面を覆う黒。
同時に唇に感じた体温に、僕はキスされた事を理解した。
「…さの、さん…?」
「俺じゃない奴にキスされたみたいでドキドキしたか?」
くつりと笑った左之さんは正面へと視線を移すと、同時に青へと変わった信号を合図にアクセルを踏んだ。
「…もう、変な事言わないでくださいよ…」
「ははっ冗談だよ」
僕は左之さんと同じ様に視線を前方へと向ける。
表情には冷静さを貼り付けて。
でも、ほんとはドキドキと忙しなく鼓動を刻む心臓の音を悟られないように。
僕はサンバイザーの脇から漏れる日差しを遮る様に目の前で自分の掌を翳すと、もう一度運転席の見慣れない姿の恋人へと密かに視線を送った。
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『蜂蜜と飴細工』の管理人様、柚魅さまより、相互記念にいただいました!!
沖田さんの可愛らしさに完全に心奪われました><
柚魅さま、素敵なお話をありがとうございました!!
これからもよろしくお願いいたします(*^^*)
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