*合宿(沖+斎+平)

部の大会を一か月後に控えた夏休み。
剣道部は最後の追い込みのために一泊二日の合宿を開いていた。

「やー!!」
「めーーーーん!!」

道場には活気溢れる声が響いている。
その中でも一際気合が入っている男が一人…

「せ、先輩…少し…休憩を…」
「何言ってんのさ?もう根をあげちゃうの?大会まであと一か月だっていうのに、随分と余裕じゃない。」
「ひぃ…」
「総司。少しは加減というものをしてやれ。」
「だって、一君。加減したらこの子のためにならないじゃない。」
「手加減をしろと言っているのではない。後ろを見てみろ。」

沖田が後ろを振り返ると…

今まで沖田の練習相手になっていた生徒がみんな倒れてしまっている。

「…」
「この猛暑も少しは考慮してやれと言っているのだ。倒れてしまっては元も子もない。」
「…わかったよ…」

沖田は竹刀を納めた。


***
その夜…

稽古が終わり、部屋へと戻った沖田・斎藤・藤堂の三人は、明日の稽古へ控えるために早々に布団を敷き、横になっていた。

「しっかし、今日の総司は気合入ってたよな。」

藤堂が二人の方へ顔を向け、喋りだした。

「…そうかな?」
「うん!!なんかすっげーやる気だった!!なんか怖いぐらいにさ!!」
「それって、褒めてるつもり?平助。」
「当たり前じゃん!!なぁ、一君?」

今まで布団の中で目を瞑っていた斎藤が二人を見遣る。

「あぁ。どこか、今までにない気迫を感じたな。」

斎藤はどこか笑みを含んだ顔で話す。

「…総司。」
「ん?なぁに、一君?」

「お守りとは、井吹もなかなか可愛らしいことをするものだな。」
「!!なっっっ!!え!?///」

斎藤の一言に沖田は布団から飛び起きる。
暗闇でもわかるほどに顔を真っ赤にさせ、斎藤を目視している。

「え!?お守り!?なにそれ?俺聞いてないんだけど!!」

藤堂も布団から抜け出し、二人に近寄る。
斎藤の暖かい眼差しと、藤堂の好奇心に溢れた眼差しを向けられ、沖田ははぁ、と溜息をつく。

「…見たんだ、一君。」
「あぁ。まぁ、胴の裏などは外してしまえば丸見えだからな。」
「あー…、もっと見えないところを選ぶんだった。」
「だから!!俺も話に入れてくれよー!!」

斎藤が語るに…

今日の稽古終了後、道場を閉めるために最後の見回りをしていたところ、乾かすために置かれていた沖田の胴の裏に、何かくくりつけられていて…。
何かと思い、よく見てみると、それは手作りのお守りだったということだ。

「へーー」

話を聞いた藤堂はニヤニヤしながら沖田を見遣る。
沖田はばつが悪そうに顔を逸らした。

「そりゃぁ、あんだけやる気にもなるよなぁ。そっかそっか、龍之介がねぇ…」
「…うるさいなぁ。向こうがくれたんだから、つけないわけにはいかないでしょ。」

そういう沖田の顔はどこか嬉しそうで。
斎藤と藤堂も思わず顔が緩む。

「あー!!いいな、総司は。幸せそうで!!」
「なにさ。そういえば、平助は今好きな人とかいないの?」
「へっ!!?//」

沖田の何気ない一言に藤堂は目を見開く。

「お、俺は別に…//」
「ふーん、いるんだぁ。」
「う…」

元々思ったことが顔に出やすい藤堂だが、今彼の顔は一目瞭然なほど真っ赤になっていて。
沖田も斎藤も、今度は平助に顔を向けた。

「言いなよ、平助。今更隠すなんてなしでしょ。」
「……さん…」
「ん?聞こえないよー?」
「〜!!//左之さん!!//」

ガラッ

「俺がどしたんだ?」
「!!!!!左之さん!!???///」

いきなり入ってきた原田に三人は驚きを隠せない。
原田は剣道部顧問のため、この合宿にももちろん参加している。
今は夜の見回りをしていたらしいが…

「さっきからなぁに騒いでんだよ。外まで聞こえてたぞ。」
「実はですね、平助が左之さ「わーー!!//」」

沖田の口を思いっきり押え、藤堂は原田へと笑みを向ける。

「な、なんでもねぇよ、左之さん!!もう騒がねぇから!!」
「?可笑しな奴だな。まぁ、明日も早いんだ。ゆっくり休んどけよ。」
「お、おぉ!!」

原田が出て行ったのを確認して藤堂は沖田の口から手を離す。

「総司!!お前なぁ!!」
「ふふ、ほんの冗談なのに。」
「お前のは冗談に聞こえないの!!!」
「でも、そっかそっか。左之さんねぇ。」

今度は沖田が頬を緩ませる。

「告白とか、しないの?」
「…一応…今度の大会で優勝したら…したいなとは思ってる…」

目を逸らしながら言葉を紡ぐ藤堂に、二人はにっこりとほほ笑む。

「そっか。なら、そのためにも頑張らないとね。」
「…うん!!…さて…」

藤堂と沖田は一斉に今までだんまりを決め込んでいた者の方を見る。

斎藤は素早く布団を被ると、ふたりに背を向けた。

「一君ずりー!!自分だけなんも言わねぇなんて!!」
「一君、それはダメでしょ。ほら、観念しなって!!」

沖田は斎藤の布団をはぎ取るようにして奪う。

「な、なにをするのだ、総司!!」
「一君が無視するからいけないんでしょ?ほら、教えてよ。」

二人の視線が斎藤を捕える。
斎藤は少し困った顔をして答える。

「自分でも、わからんのだ。この気持ちがなんなのか。」
「それって、どういう風に?」
「…ずっと、尊敬してきたお方のことを、いつからか、気が付けば考えてしまっていて。その方が、他の者と居るところを見ると、とてつもなく胸が苦しくなる。」
「えっと…一君…。それは多分、好き…なんじゃないかな?」
「だが!俺はその方のことをずっと尊敬して…」
「尊敬してたから好きになることも多いと思うし、それに、一君の今の話を聞く限りでは、確実に君は土方さんに好意を持ってると思うよ。」
「うん、俺もそう思う。」

沖田の言葉に、藤堂も頷く。

「これは…好意なのか…。ん?総司、今なんと…?」
「だから、君は土方さんのことが好きなんでしょ?」
「!!//な!!何故土方先生だとわかったのだ!!?」
「いや、一君…バレバレでしょ…」
「平助もか!?あんたたちは人の気持ちが読めるのか!?」

((いやいや、一君…))

結局この後も三人は話し込み、眠りについたのは夜中だったという。


=====
恋する乙女(ぇ)3人組を書きたかったんです><
これからこの項目で、左之平と土斎も書けたらいいなと目論んでいる管理人です。


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