風(土沖)

「暑い…」
「…」
「あついー…」
「…」
「あっつ「さっきから暑い暑いうるせーんだよ!!そんなに暑けりゃ水浴びでもしてきやがれ!!」」

自室でどうしても早くやらなきゃならねえ仕事をこなしているときに、こいつはいきなり入ってきた。
土方さんの迷惑にはなりませんよ、とかぬかしてやがったが、後ろでずっと暑い暑い言われちゃかなわねぇ。

「こっちはこのくそ暑い中仕事こなしてんだよ!てめぇも少しは隊士に稽古ぐらいつけてきたらどうだ!!」
「なんでこの暑い中、そんなことしなくちゃいけないんですか。嫌ですよ。」

そう言って、着物の合わせを少し広げ、パタパタと胸元を手で仰ぐ。

…誘ってやがんのかこいつは…

俺の視線に気づいた総司がニヤッと笑った。

「土方さん、どこ見てるんですか?」

その挑発的な笑みに思わず見とれる。

「…うるせぇ。見られたくねえんならその合わせをなんとかしやがれ!!」

そう言って総司の合わせを思い切り閉じる。

「なにするんですかー!!あっついじゃないですか!!」

文句を言う総司を無視して俺はまた机に向かう。

「…」

しばらくすると、後ろから障子の開閉の音が聞こえる。

そっと振り返ると、総司の姿はそこにはなかった。

出てったか…

かまってやれなかった罪悪感と総司がいない虚無感に苛まれたが、俺は自分を律して仕事に取り掛かった。


仕事に取り掛かり数刻たった頃、

パシャ…パシャ…

部屋の外から水音が聞こえてくる。

何事かと思い、障子を開ける。

そこでは、
総司が着物のまま、水浴びをしていた。

「!!なにやってんだてめえは!!そんな恰好で水浴びしたら風邪引くだろう!!」

俺は押入れから手拭いを出して総司に駆け寄った。
そのままあいつの頭をガシガシと拭く。

「ほら、その服もさっさと脱いで…」

総司の顔を見ると、

…ニコニコと笑っていやがった。

「服脱がなきゃ風邪引いちゃいますねー。じゃあ、土方さんの部屋で着替えさせてくださいね。」

そう言って総司は俺の部屋に入っていく。

はめられた…。

その後を追って部屋へ入ると、あいつはすでに上の着物を腰まで下ろして、手拭いで体を拭いていた。

とても剣を振るうようには見えない華奢な腕や、透き通るような白い肌。
そして…

「土方さん、またそんなに見ないで下さいよ。」

挑発的な…その目つき。


俺は総司を畳へ押し倒した。

「てめぇが誘うのがいけねえんだからな…。」
「僕を無視するのがいけないんですよ。」

どちらともなく口付ける。

徐々にそれは激しさを増し、俺は総司の口内を犯していく。

「…ん、ふ…」

あいつから漏れる吐息が、俺を煽っていく。

「…しょうがねえ奴だな…」

そのまま、肌を重ねた。






「あっついよー。」
「…」
「せっかく水浴びしたのに、土方さんのせいでまた暑くなったじゃないですか。」

着物を乱したままの総司が俺の横で愚痴る。

「うるせぇよ!だからてめぇから誘ってきたんだろうが!!」
「僕はただ水浴びしてただけですよ。勝手に欲情したのは土方さんじゃないですか。」

…こいつには何言っても駄目だな。

そう感じた俺は、服を正してまた机に向かう。
しかし、情事後のその体はまだ熱を持ち、自然に汗が頬を伝う。

「…」

その様子を見ていた総司が、障子の方へと歩いていく。

また拗ねさせちまったか…?

そう思っていると、

スッ…

障子をわずかに開ける。

すると、その隙間から心地よい風が部屋に吹き込んでくる。

もうすでに夕刻になっていたせいもあるだろう。しかし、この季節の風はもっと纏わりつくような温さをはらんでいるはずだ。

まさか…

思わず総司の顔を見る。
その顔は少し誇らしげだった。

…打ち水か。

「土方さん、激しいですからね。終わった後は涼しい方がいいでしょ?」

僕に付き合ってくれたお礼です。
そう言って俺に笑いかける。

…こいつには…敵わねえな。

そのまま、あいつは満足そうに部屋を出て行った。

俺をやさしく包み込む、心地よい風を残して。



=========
総司が土方さんの部屋の前で水浴びしてたのも、服のままだったのも、全部計算済みだったってわけです(分かりづらい;)

打ち水いいですよね。

夏の暑い日に、外に水撒くだけであんなに夕方涼しいし(*^ω^*)
エコですね、エコ♪(笑)

土方さんも、仕事頑張れたはずです!!(笑)

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