ラフメイカー

私はカボチャジュースより緑茶の方が好きです。味覚はイギリス人寄りですが、やはり日本食の味を知ってる以上、慣れ親しんだあの醤油や味噌などの和食が時々恋しくなりまする。納豆と白いご飯プリーズ!ついでに納豆のネバネバでトリック&トリートしてやんよ!トリックは納豆ネバネバ攻撃でトリートは納豆贈呈。どちらにしろ納豆からは逃れられないのさフハハハハ!



『(…って事で、これでトロールを撃退出来ないかな?)』

「(今の件で何処にトロールが出て来たんだ!?)」



臭いモノには臭いモノで蓋をしろ的な理論だと語るリク。破れ鍋に閉じ蓋ならぬ、破れ鍋に破れ蓋な気がしないでもないが…と律儀に返すヴォル。理論も糞も無いアホ丸出しな私の発言は兎も角。

え〜、前話からもボヤいていましたが、今夜はハロウィンです。現在ハロウィンパーティーの真っ只中であるにも関わらず、二階の女子トイレに一人で向かっておりますリク・スネイプです。

朝食の席の後。飛行訓練の一件で、ハリーが退学にならなかっただけでなく、どういう訳か最新の箒を教師公認で手に入れてしまった事を知ったドラコの機嫌は、それはそれは最悪であった。退学になると思ってたライバルが、あろう事か自分が助力して箒をプレゼントしてしまった様なモノだ。結果論であるとはいえ、ドラコにとっては面白くないを通り越して、腹わたが煮え繰り返っているのだろう。獅子寮のシーカーに迄抜擢された事を知ったらどうなる事やら。前髪が更に後退するかもしれない。オマケに先日の決闘の事もある。そんな不機嫌MAXなドラコを一日中相手にしてると、流石に私も疲れる訳で。今回はドラコをグラップとゴイルに押し付けて、ちょっと逃亡してみた次第です。去り際にパンジーから夕食はどうするの?って訊かれたので、少しだけ時間をズラすと伝えてもきた。

不機嫌MAXなドラコの相手をするのに疲れたと言うのを口実に、こうして上手く(?)夕食の席を抜けて来た真の目的は、勿論…



『ハーマイオニー、いる?』

「何よ…貴女も私の事、笑いに…来たの……っ?」



おおぅ…ふ。か、完全にブロークンハートしてるじゃないか。初めて聞いた嗚咽混じりなハーマイオニーの声に、素で狼狽えてしまった。ラフ・メイカーを気取ってやって来たよ!って言っても某ロックなバンドを彼女は知らないから通じないしなぁ。ちょっと寂しい。良い歌だから是非とも布教したいのに音源が無いという。…あ、話がズレてきた。



『ハーマイオニー、あの…』

「帰って。私を一人にさせてちょうだい」

『で、でも…』

「貴女の友達は…パーキンソンでしょ……私の事だって、どうせ影では馬鹿にしてるんでしょ…」

『っ……!?そんな、蛇寮生じゃあるまいに!』

「(いや、お前も蛇寮生だろう)」



思わず絶句してしまったじゃないか。自分が蛇寮生だって事も忘れて。まさか、あのハーマイオニーからここまで風当たり強く拒絶されるとは思ってもみなかった。ハーマイオニーとは仲が良い方だと少なからず自負していたけど……それは私のただの驕りだった様だ。まさかここで蛇寮と獅子寮の壁を感じる事になるとは思わなかったよ。

…ひょっとして、マートルに何か言われた直後だったりするのだろうか。あー、あり得るねソレ。だとしたら何てタイミングが悪いんだ私。



「(どうする?一度出直すか?)」

『(う〜…確かに、押して駄目なら引いてみろとは言うけどさぁ…)』



ここで諦めて引き下がる位なら、最初から私は"こっち"を選びはしないよ。ヴォルの言葉に、リクはNOと返した後、先程迄より少し声のトーンを落として、ポツリと呟いた。



『……私はハーマイオニーとも友達だと思ってた。けど、ハーマイオニーにとっては違ったんだね』



寂しさを滲ませ、哀愁を込めてそう語り掛ければ、扉の向こう側でハッと息を詰まらせたのが気配で分かった。

本当、狡いよねぇ。事情を知った上で、"友達"を主張してさ。



『勘違いしててごめんね。そもそも、ハーマイオニーが悩んでた事にも気付けなかった癖に、偉そうに友達だ…なんて、私が言っちゃ駄目だよね…』

「ま、待って…っ!」



バタン、とトイレの個室から焦って飛び出して来たハー子を笑顔で出迎える。押して駄目なら引いてみな、という事で引くフリを装ってみました。もう少し粘られるかと思ったけど、思ったより早く出てきて貰えたねー。



「ひ、酷い!騙したわね…っ」

『こうしたら出て来てくれるかな?と思って』


手段を選ばぬ狡猾さはまさに蛇寮生!という事で、遠慮せずにぎゅうっとハーマイオニーを抱き締めてみた。



『ごめんね、ハーマイオニー。でも、出て来てくれて有難う』

「っ……もう、あまのじゃく…っ」



肩を震わせて涙を流すハーマイオニーの背中を摩りながら、リクは思う。私、結構声優に向いてるかもしれない。いや、もしくは女優なんかでもいけるんじゃね!?



「(…お前は本当にその子の友達なのか?)」

『(蛇寮生故に、真の友しか私にはいないぜ!)』

「(グレンジャーにも友達は選ぶよう忠告するべきだったな)」



何だかヴォルがハーマイオニーを哀れんでいる様な感じがする。ちょっと意外だ。

 

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -